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 続編ニュース 46号                  2004.6.3

 ◆目次◆
     編集前記
片桐  実践に学ぶ    毛利  豊先生の原稿
     深沢英雄実践に学ぶ    澤野 郁文先生の原稿
     深澤五郎実践に学ぶ    澤野 郁文先生の原稿
     古関  実践に学ぶ    澤野 郁文先生の原稿
     福澤  実践に学ぶ    澤野 郁文先生の原稿
     河野  実践に学ぶ    澤野 郁文先生の原稿
     整理表 

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 ◆編集前記◆
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こんにちは。ニュース46号をお届けします。

これで「実践に学ぶ」の原稿は終了です。編集委員の片桐先生、坂尾先生、澤野先生、毛利先生、ありがとうございました。

執筆者のみなさんには、この後、ご自分の書いた原稿について校正をしてもらいます。
6月10日くらいになります。校正については、どのように行うか、追ってお知らせします。

この本は、7月29日の、第3回日本群読教育の会全国大会(東京大会)に合わせて出版します。あさって、6月5日には、大会の会場となる東京日本青年会館にて、準備の話し合いをします。また、この本の、最終の詰めについて打ち合わせます。

本の完成まで、一歩ずつ確実にしごとをすすめていきたいと思います。よろしくお願いします。

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 ◆片桐実践に学ぶ(14号に掲載)◆毛利 豊先生の原稿
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 高校生ともなると、こんなに高度な群読に取り組
めるのかと、しみじみと考えさせられた。
片桐先生の実践から四つのことを学びたい。
第一は、難解な漢詩を群読で音声「表現」させる
ことで、感性的に「理解」させようとした点である。
 寓意に満ちた隠喩詩「飲酒」における作者陶潜の
「真意」をめぐっては昔から論じられ、今だに謎が
多かった。それを、時代も文化も境遇も違う日本の
高校生に、文献研究によらず、音声表現と感性で探
り当てさせようとは、ユニークである。
 第二は、脚本づくりをテコにして「話し合い」活
動を仕組んでいる点である。個人では思考停止に追
い込まれがちな難解な謎解きも、小集団でやれば持
続性と深まりとが保障されやすい。
 第三は、その話し合い活動の中に「書く」という
作業を埋め込んだことである。これで〈この詩の中
心部分はどこか〉という目的意識が明確になり、
〈「真意」とは何か〉と思考が焦点化したのである。
 第四は、複数グループでの競作によって、学び合
えるという点である。解釈だけでなく表現法の多様
性にも目を開かれる。同じ「強調」でも、漸減(そ
の一)と繰り返し(その二)があることを知り、そ
れぞれの趣の違いも味わえる。
 それにしても、「還る」に詩の中心を見たことに
驚嘆する。この大詩人がよく使った「帰鳥」の形象
は、官を辞して帰田した三流貴族の自況とする点で
は諸説は一致している。秘境でなく人境でも心の持
ち方一つで隠遁できるのさと、作者は唯心論で返し
ている。悟ったら俗界に還れ、という禅の奥義に通
じる。中央権力の圧力を避け田園に韜晦した陶潜の
寓意を、高校生たちは直感したのではないか。
「言を忘る」は、非言語による悟りを説いた当時流
行の道教を連想する。言葉の有限を嘆く若い世代に
は共感できたので、脚本のこの部分も種々工夫して
いるのだろう。
 国語科の四領域を関連づけて読み解かせ、古人の
隠された「真意」に迫らせた特異な実践である。

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 ◆深沢英雄実践に学ぶ(38号に掲載)◆澤野 郁文先生の原稿
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 低学年の子どもたちを楽しく群読の世界に誘いな
がらもしっかりと学級集団を高めていく深沢実践か
ら、数多くのことを学ぶことができる。
 第1に、班学習を組織している点である。
 さらに、授業の中で、子どもたちの学習集団を組
織している点に学びたい。低学年の授業の中では、
ともすると教師主導型の一方的な指導に偏ってしま
う場合があるが、深沢さんは、日常的に学習の中に
班を活用し、子どもたち同士が高め合っていく姿を
見守っている。このような学級集団作りの観点が群
読指導をより深いものにしているのだ。
 第2に、場面緘黙的な子どもの成長のきっかけを
見事に作り出している点である。
 深沢さんは、場面緘黙的なA子の抱える弱点に寄
り添いながらも、群読という手法に挑戦させていき、
見事に成果を導き出している。
 第3に、活動の教育力を信じている点である。
 前述のような学級作りの姿勢が、子どもたちの学
級の仲間を常に思いやっているという雰囲気を深沢
学級に創り上げていったのであろう。「大丈夫かな
と不安げな表情をしている」「A子の声に合わせて、
しぼった声で読みはじめた」等、その優しい真剣な
雰囲気が本文から読みとれる。そして、その子ども
たちの活動をじっと見守りながら、子どもたちと集
団での活動の教育力を信じて指導を組み立てている
姿に学びたい。
 第4に、軽快なリズムの中にも低学年で取り組み
やすい繰り返し等の技法を駆使している点である。
低学年の子どもたちを楽しく群読に引き込むため
には、やはり魅力的なシナリオが必要。このシナリ
オはソロとコーラスの掛け合いが基本となっていて
練習しやすく、動作を取り入れて変化とアクセント
を持たせ、漸増・漸減法によって表現の幅を広げて
いる。低学年が、自分たちのグループで授業の中で
取り組んでいく教材としてとても考えられたもので
あると思う。

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 ◆深澤五郎実践に学ぶ(31号に掲載)◆澤野 郁文先生の原稿
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 マスコミ的・退廃的文化に対抗する学校文化とい
うものを創り出していきたいと教師なら誰でも考え
る。深沢さんの実践は、「継続は力なり」と学級文
化を創り上げていく優れものである。その実践の素
晴らしさを以下の5点にまとめた。
第1に、毎日群読を続けている点である。
「子どもたちも一日のうちにどこかでやらないと
ちょっと調子が出ない感じ」という本文を読んで驚
いたのは私一人だけではないと思う。群読を、子ど
もたちの日常生活にそこまで浸透させるためにどれ
ほどの働きかけがあったのだろうか。が、「楽しい
ひとときを過ごしている」という記述から、けして
教師の願いを一方的に押しつけるような強引な指導
を続けてきたのではないということが分かる。教師
も子どもたちも楽しみながら毎日続ける。そんな群
読は、一つの理想型である。
第2に暗唱に取り組み続けていた点である。
「日本語の音を身をもって体感」するために効果的
なのは暗唱である。暗唱は内容を理解できなくても
大きな効果を持っているという。群読も、暗唱がそ
の基礎にあればさらに奥深いものになるはずである。
第3に「〜を表現しよう」という語りかけである。
題材の詩がある場合も、一からシナリオを起こす
場合も、最終的なイメージを全員で共有することが
大切である。そのために教師が一つのテーマを提起
し、そのテーマに向かって、力を合わせて工夫を続
けるという取り組みが、作品の質を高めているのだ。
第4に、洗練された技法の活用である。
漸増法によって、機関車が走り出すときの迫力あ
る時間が表現されている。交代しながら一文ずつ読
みつないでいく場面では、重厚なリズムに乗って走
る機関車の姿が目に浮かぶ。追いかけの技法を後半
に挟むことによって、走りの距離感が生まれる。最
後にダイナミクスを大胆に変えることによって、全
体が締まる。コレしか無いという技法を洗練し、組
み立てていくセンスと工夫に学びたい。


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 ◆古関実践に学ぶ(25号に掲載)◆澤野 郁文先生の原稿
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古関さんは、優れた学級集団作りを繰り広げてい
る実践家であるが、そのエッセンスも盛り込まれた
この実践から、次のような点を学んでいきたい。
第1に、群読の学習会を企画する実行力と熱意。
自分の学校に優れた指導者を呼んでの学習会は、
誰でも一度はやってみたいと思うこと。しかし、実
行に移すことはそう簡単では無い。しかも、聞きっ
ぱなしの学習に終わらせず、学んだことをすぐ実践
につなげている。このような職場での企画力と実行
力にまず学びたい。
 第2に、リズムと会話を巧みに組み合わせたシナ
リオの構成力。とかく「6年生を送る会」等の行事
ではいわゆる「呼びかけ」風の群読になりがちで、
なかなか工夫が難しい。が、この実践では、「ジャ
ブジャブ」「ビューン ビューン」等の擬態語を節
目に挟むことによって、リズムと変化を現すことに
成功している。
 第3に、間をあけるというテクニック。
しかも、本文中に「ここで聞いている子どもは耳を
澄ます」とあるように、前述のリズミカルなコール
の後ポーズを挟むことによって、聞き手の期待感と
集中が高まるという効果も創り出している。
 第4に、子どもたちと共にシナリオ作りに取り組
む姿勢。一からシナリオを子どもと共に創り上げて
いったことが、実はシナリオに書ききれない行間の
ニュアンスをみんなで共有することにつながる。
 だからこそ前項の絶妙な間も、子どもたちのもの
になったのだ。時間と根気のいる方法だが、回り道
せず学級集団の力を信じている姿勢を学びたい。
 第5に、先輩を見る無邪気な目の生かし方。
 シナリオから5年生が日常的に6年生とよく交わ
っていること、6年生の活躍をよく肌で感じ取って
いることが伝わる。具体的なエピソードを取り上げ
て先輩の素晴らしさを語る子どもたちの純粋な気持
ちを、素朴な言葉でシナリオ化する技術を学びたい。

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 ◆福澤実践に学ぶ(37号に掲載)◆澤野 郁文先生の原稿
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 福澤さんの実践は、「はじめての群読」に取り組
もうとするときに我々に勇気と見通しを与えてくれ
る実践であると感じた。
 第1に学びたいのが、6年生を卒業させてすぐ1
年生を担任するというギャップに負けないしなやか
さを持っている点である。
「学級発表で何を発表しようか考えたときにすぐ浮
かんだのが群読」と本文中にあるが、6年生と1年
生の勝手の違いという杞憂を持つことなく、ストレ
ートに指導に取り組んでいく実直な熱意が素晴らし
い。通勤の車の中で毎日CDを聞き自然と詩も覚え
次に担任した学級でもぜひ群読に挑戦しようと考え
ていたからできたのであろうか。それだけではない
だろう。「難しい技法は取り入れずに楽しく言葉遊
びをするつもりで」という1年生に対する指導方針
が功を奏したのである。そのしなやかな発想を我々
も取り入れていきたい。
 第2に、教師自信が楽しんでいる点である。
 私自身「群読っていいなあ」と魅力を感じていっ
たと述べているように、追いかけ読みや乱れ読み、
異文平行読みなどを取り入れた高度な群読に取り組
んでいながら、押しつけ調の練習に陥ることなく教
師自信が群読を深く楽しんでいたのであろう。だか
らこそ、はじめての群読でも、子どもたちに魅力を
感じさせる指導ができたのだ。楽しもうという意識
がなければ、毎日CDを聞けるものではない。
 第3に、1年生ぴったりの台本だという点である。
 同じパターンの繰り返しは、子どもたちに安心感
を与える。低学年の子どもにとって繰り返しほど重
要かつ効果的な学習法はない。また、「パン」と手
をたたくというちょっとした工夫が、子どもたちの
心をとらえている点も見逃せない。「それも真似し
ながら、みんなが笑顔でできるようになっていっ
た」とあるから、きっと楽しげな即興がそこに隠れ
ていたような気がする。その辺りの遊び心も1年生
の指導には欠かせない部分だと思う。

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 ◆河野実践に学ぶ(32号に掲載)◆澤野 郁文先生の原稿
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 日本群読教育の会全国大会の開会で披露されたパ
フォーマンスの実践報告から、以下の点を学びたい。
 第1に、アイスブレイクしてしまう発想である。
 研究会のオープニングで「コレはひと味違うぞ」
と参加者に感じて頂くためのアイディアを生み出す
のはそう簡単なことではない。しかし、臆せず挑戦
しようとするバイタリティーと発想にまず学びたい。
 第2に、実行力と組織力である。
 イベント成功のためにはアイディアだけではたり
ない。実践的指導力と実務的運営力が必要になって
くる。河野さんは持ち前の明るさと行動力で、仲間
を引っ張り巻き込み見事に楽しませてくれている。
その実行力と組織力を我々も身につけたいと思う。
 第3に、音楽的要素を取り入れたセンスである。
 首藤さんという音楽的オーソリティのフォローを
受けつつ群読の方法論に新たな提起をしてくれた。
 ボイスパに台詞を載せて繰り返すという仕掛けは、
簡単に誰でも参加でき楽器を奏でるよりずっと容易
にアンサンブルを楽しむことができるのだ。一言だ
けの台詞をそのリズムにのせて繰り返し続けるとい
う手法は、今後群読作成の定石となりそうだ。
 第4に、寸劇で見事に群読への日常的なアプロー
チを紹介したことである。
 社会や理科の授業でも群読は取り上げられるので
ある。というよりも、今まで無意識的に群読の手法
で授業を進めてきたのだ。和やかな雰囲気の中での
寸劇で、そんな大切なことをあっさり教えてくれた。
 第5に、1時間の練習で実行委員を巻き込んでし
まう明るいバイタリティである。実行委員といって
もむしろ初対面に近い集団を1時間の練習でまとめ
るためには、確かな段取りと的確な指導が必要であ
る。本文からは詳細はつかめないが、参加したスタ
ッフは群読指導の進め方のうまさを体感することが
できたはずである。
 だれでも簡単に楽しく参加できる群読を広げるた
めに、是非我々もまねしてみたい実践である。



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***2004.7.29 東京日本青年会館 第3回群読大会を成功させましょう****
 (参加申し込みがはじまっています。下記のHPに申込用紙があります)
 
  重水 健介(日本群読教育の会事務局)
  日本群読教育の会 http://gundoku.web.infoseek.co.jp

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