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 続編ニュース 34号                2004.5.10
 
 ◆目次◆
     編集前記
音は早めに
     加藤恭子先生の原稿  V 資料 群読脚本   
     松本順子先生の原稿  V 資料 群読脚本  
U群読指導のポイント 第1章 詩    詩の研究部   (まとめ 澤野 郁文)
                第2章 物語   物語の研究部  (まとめ 松本 順子)
                第4章 わらべ歌 わらべ歌の研究部(まとめ 長塚 松美)
     整理表
 
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 ◆編集前記◆  
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 こんにちは。続編ニュース34号をお届けします。実践のポイントです。これは、日本群読教育の会の中につくった研究部(詩・物語・古典・わらべ歌)の活動の一つとして、部長を中心に研究したことをまとめたものです。澤野郁文、松本順子、毛利豊、長塚松美の各部長のみなさんには、とくにご尽力いただきました。部長の先生方、そして部員のみなさん、ありがとうございました。

追って、次からの作業内容と日程をお知らせします。ご多忙の中、いろいろとお願いすることも多くなると思いますが今後ともよろしくお願いします。

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 ◆録音の郵送締め切り◆
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音ありの方で、まだ、録音を山本さんへ郵送していない方はおられないでしょうか。まだ、の方は至急お願いします。5月15日(金)までに必着とさせていただきます。ご都合の悪い方は至急ご連絡ください。
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 ◆加藤恭子先生の原稿◆    
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「あるけ あるけ」   鶴見正夫作  加藤恭子編

<解説>
低学年、それこそ1年生でもできる群読はないかなあと考えてつくった。声を合わ>せる楽しさ、言葉の持つリズム感の心地よさを体感できるように、取り掛かりやすい四拍子のリズムになっている。国語の音読教材の発展、朝の会時の文化活動、ちょっとした学級発表などに使うことができる。

<読み手・演出ノート>
  
Aグループ    1対1で読んでもよい。同数のグループで。
Bグループ

@ 元気のいい声でリズミカルに表現する。
A BGMとして、太鼓(アフリカンな音のするものがベスト)を「タタタン(どこどん)」のリズムでたたく。手でたたく音がよい。
B リズムや声を合わせることに慣れてきたら、動作もいれていく。「どこどん」に合わせて足を踏みならす。「そら そら」「ほら ほら」のところでは、手を叩く。身体表現も遊び感覚で取り入れながら、この詩のイメージを豊かに楽しくふくらませるようにしていく。


<群読脚本>

  全) どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
     どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
  (A)┌ どこどん  どこどん  あーるけ  あるけ
  (B)└ どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
  (全) どこどん  どこどん  あーるけ  あるけ
  (A) あーるけ  あるけ   ちきゅうのたいこ
  (B) どこどん どこどん   あーるけ  あるけ
  (A) みんなのあしで  たたいてあるけ
(B) そら そら そら そら  あーるけ  あるけ
  (A) どこどん どこどん  そら そら そら そら
(B) あーるけ あるけ  どこどん  どこどん
  全) どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
     どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
  (A)┌ どこどん  どこどん  あーるけ  あるけ
  (B)└ どこどん  どこどん  どこどん  どこどん
  (全)  どこどん  どこどん  あーるけ  あるけ
  (A) あーるけ  あるけ   ちきゅうのうらで 
  (B) どこどん どこどん  あーるけ  あるけ 
  (A) ちきゅうのうらで  だれかのあしも
(B)  たたいているよ  ほら ほら ほら ほら
  (A) どこどん どこどん  ほら ほら ほら ほら
(B)  あーるけ あるけ  どこどん  どこどん
  (全) どこどん  どこどん  あーるけ  あるけ


 ★「ちいさい おおきい」 香山美子作  加藤恭子編★

<解説>
 ソロ、アンサンブル、コーラスで行う群読の取り掛かりとしてやらせるとよい。BGM的なコーラスの役割、強調したいアンサンブル、思いっきり表現するソロ。低学年でもできる。ただ、BGM的なコーラスとはいっても、声を合わせなければいけない難しさやリズム感が必要なことなど、その他大勢では決してない、群読全体のできを左右する役柄であることはしっかり伝えておく。

<読み手・演出ノート>
 ソロ 1〜6、アンサンブル、コーラス1、コーラス2

@ コーラス1とコーラス2は掛け合いなので、同じくらいの大きさの声でテンポよく読ませる。
A その次の(アンサンブル)(コーラス)は言葉に表情を持たせて読ませる。
B ソロは思いっきりおどけて動作をする。読み方も「ぞうさんの」とすんなり読ませるよりは「ぞぉさぁんのぉー」とぞうをイメージさせる読み方をさせたい。
C ソロの後の動作は全員でやりたい。

<群読脚本>

《省略》



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 ◆松本順子先生の原稿◆ 群読脚本 資料編
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<解説>
 我が校は、高知市において中国帰国児童の多く居住している地区であり、この10年間、国際理解教育に力を入れ授業の中に中国語を投げ入れとして行っていることで知られている学校である。3年前からは総合的な時間を使い中国語の授業を行っている。そして、3年生だけは週に1時間の中国語の授業が組まれていた。
 指導者は、中国から高知大学に留学生している方(前期・後期に分かれ)にボランティアとしてきてもらっている。今回、前期の授業を担当して下さった劉(りゅう)先生とのお別れパーティーで、3年生全員の67名で「劉先生の思い出」を群読し、先生へのお礼にしようと子ども達と話し合った。
 脚本は、学年教師が作り、練習にはいった。

<読み手>
・ソロA〜10名
(アンサンブルはこの10名、ソロHは中国帰国児童にして、中国語のリーダーとして活躍させた)
・あとは男女別、全員の分読

<演出ノート>
@ ここでは、リュウ先生に習った中国語のまとめをすることを子どもたちに確認し「中国語の一つひとつ、こころをこめて言おう」と投げかけた。そして「友だちが言っている時も、小さい声で言っていよう」「間の取り方にも充分に気を付け、心の中で3秒数えよう」と留意点を与えた。
A BGMを入れると群読が映える。このときの群読では、バック音楽には、「カノン」を流した。

<群読脚本>

(A)                 リュウ先生との思い出
(B)                 リュウ先生
(全員)                リュウ先生
(C)                 中国語をいっぱい、ならったね
(全員)                いっぱい、ならったね
(D)                 先生とはじめて 出会った 2003年5月19日
(全員)                2003年5月19日
(E)                 中国の話を聞いて
(F)                 ぼくらは、中国に行きたくなった
(全員)                行きたくなった
(G)                 わたしたちが、おぼえた中国のことば
(H)                  トウシュメン ハオ(注釈:皆さん、授業を始めましょう)
(アンサンブル)            ラオシー ハオ(注釈:先生、授業をはじめましょう)
(全員)                ラオシー ハオ
(H)                 イー(注釈:一)
(H+A)               アル(注釈:二)
(H+A+B)             スァン(注釈:三)
(H+A+B+C)           スー(注釈:四)
(H+A+B+C+D)         ウー(注釈:五)
(H+A+B+C+D+E)       リィウ(注釈:六)
(H+A+B+C+D+E+F)     チー(注釈:七)
(H+A+B+C+D+E+F+G)   バー(注釈:八)
(H+A+B+C+D+E+F+G+I) ヂィウ(注釈:九)
(アンサンブル)            シー(注釈:十)
(全員)         イー、アル、サン、スー、ウー、リィウ、チー、バー、ヂィウ、シー
(I)          ほかにも、曜日や自分の名前を中国語で言えるようになった
(J)          中国語での名前を知って、とってもうれしかったよ、ありがとう
(全員)        ありがとう
(男子全員)      ぼくが大人になったら、中国でリュウ先生と会いたいな
(女子全員)      わたしが大人になったら、中国でリュウ先生と会いたいな
(全員)        リュウ先生、またいつか中国で会おうね
(H)          リュウ ラオシー ヅァイヂィエン (注釈:リュウ先生、さようなら)
(アンサンブル)    リュウ ラオシー ヅァイヂィエン
(全員)        リュウ ラオシー ヅァイヂィエン



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U 群読指導のポイント 第1章 詩             詩の研究部(まとめ 澤野 郁文)
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1 原文を選ぶ段階でのコツ!

○ 気に入った文章なら何でもOK!
「どんな教材が群読に適していますか?」「この詩を群読にしてみたいと思うのですけれどもできるでしょうか?」というような質問をよく受ける。そんな質問にはこう答えることにしている。「あなたが気に入っていればどんな文も群読になりますよ!」。
群読はメロディーのない合唱と同じ。作曲家が詩をみて楽譜を書き出すように、どんな詩でも群読にアレンジしていけるのだ。臆さないでどんどん挑戦してみることである。

○ 一から原文を探すなら
 群読に挑戦してみたいのだがどの文が良いのだろうとお悩みの時は、まず気に入った詩を探してみなければならない。そんな時は、市販の脚本集をまず開いてみよう。(もちろん本書もイケる)そして小さな声で良いからリズムに乗ってつぶやいてみよう。自分のクラスの子どもたちや発表の場をイメージしながら。「この台詞、いつも元気な○○君が読んだらいいカンジだな」等と考えながら探すのだ。それだけでワクワクしてくる。原文にあたり、脚本を自作してみたいときは、何をねらうかをはっきりさせて選定に当たると良い。

 ねらいは次の2点に大別される。
 ア リズムやハーモニーを楽しむための群読
 イ 教師の思いを伝えるための群読

 それぞれの選定の視点は、以下の通りである。

<アの場合の選定の視点>
  ・ オノマトペがたくさん使われている詩
   (例)おがわのマーチ
  ・ 七五調、五七調の詩
   (例)地引あみ
  ・ 途中でリズムの変化が楽しめる詩
   (例)祭りだわっしょい
  ・ 人称変化が多い詩(登場人物がたくさんの詩)
   (例)大きなかぶ
  ・ 言葉遊びができる詩
   (例)あいうえお・ん
  ・ 早口で言うとおもしろい詩
   (例)早口言葉

<イの場合の選定の視点>
  ・ 教師の伝えたいことがストレートに表現されている詩
   (例)教室はまちがうところだ
  ・ 1回範読したら、すぐに子どもに読ませることができる詩
   (例)学級開きで使う詩



2 脚本をつくる段階でのコツ!

○ 日常に見つけられる多くのヒント
 TVのCMや番組のBGM・台詞の中に商品名のリフレインやリズムの取り方等多くのヒントがある。ちょっと気をつけて観ればどんどんアイディアが浮かんでくる。合唱曲や交響曲等の名曲からクラブ系のポップスまで音楽は勿論アイディアの宝庫である。また、演劇もしかり。取り組む原文を決めたら、常にアレンジのヒントを探しながら生活すればいくらでも情報を手に入れることができるということである。

○ リズムを出すか出さないか
 詩の場合、前述の通り大きくリズミカルかそうでないかの2つに分かれる。
リズムを出す場合、どの言葉でどんなリズムにするかをまず練る。詩の中にある言葉をリフレインしても良いし、擬音・擬態語を挿入しても良い。
 次に、テンポや繰り返しの回数等を考える。
最後に、詩の本文をどの音符のリズムでのせるかを工夫する。例えば同じ4拍でも「まーつーりーだー」という4分音符のリズムと、「まつりだまつりだまつりだまつりだ」という16分音符のリズムでは、全く違った感じになる。その辺を吟味するとますます楽しくなる。
 リズムを出さない場合は、まずテンポを考える。ゆっくりか?ちょっとはやめか?テンポが変わる場合もある。
 次に、じっくりと一人で読ませたいところ、みんなで大きく斉読したいところを決める。
 さらに、繰り返しや漸増法、追いかけ等の技法を使うと効果的なところを見つける。

(例)雨がたたみかけるように降ってくる様子の表現
ソロ  つぎからつぎへと
+アンサンブル ざかざかざかざか
+コーラス   ざかざかざかざか   (漸増法)
    
語り手1|ー つぎからつぎへと ざかざかざかざか ざかざかざかざか 
語り手2|           つぎからつぎへと ざかざかざかざか
語り手3|_                   つぎからつぎへと・・
                   (追いかけ)
 工夫のしどころであるが、技法は使えばよいというものではないので、あくまでも詩の内容を訴えたり
表現したりするときに有効かどうかで厳選しなければならない。

○ ノッてきたら自由に創作!
 リズムや技法を使ってどんどん楽しく工夫したいと思っても、なかなか原文の中からきっかけがつかめないというときは、思い切って創作文を挿入するという手もある。原文を役割読みで進め、場面が変わる部分に創作の詩を挿入しリズミカルに群読して変化をつける、というように。



3 読み手に投げかける段階でのコツ!

○ 模範は必要!
「もっと強く!」「もっと気持ちを込めて!」という指導言は、分かりづらいもの。初めて群読に挑戦する子どもたちであれば全く理解できない。思い切って教師が模範を示すことは絶対に必要である。といっても、シナリオのすべてを通す必要はない。出だしや、クライマックス等のピンポイントを、びしっと聴かせるのである。

○ 職員群読チームがパフォーマンス!
 全校が相手だったり、取り組み期間が短かったりすると、やはり完璧なお手本が必要になる。本書に付属するCDを活用しても勿論良いのだが、教師集団で練習して披露すると効果抜群。「先生やるなー」と、みんなノッてくること間違いなしである。



4 練習段階でのコツ!

○ まずは斉読!
 意外と大切なのが精読。技法やアレンジなしで原文のまま、あるいはシナリオをみんなで声を合わせて読む。詩の持つ雰囲気やテンポを全員で共有するのである。初めは教師がセンテンス毎に区切りながら読んで復唱させる、声がそろってきたら自分たちだけで通して斉読というように、丁寧に練習したい。

○ グループで工夫してコンクール!
 小グループで練習し、評価し合うというのもお互いの良さや工夫を学び合うことができて効果的。その場合、最終的には全体で取り組むのだからいたずらに競争心をあおるのではなく他グループの良さをどんどん吸収させる方向で進めなければならない。「まつりだ!の部分の読み方は2班と3班のどちらが良かったかな?」「3班の方が勢いがあって良かったと思います」「そうだね。じゃあどの班も3班の読み方をコピーしよう」というように。

○ その他大勢でなく
 コーラスの部分などは、大人数だからといって責任が軽いというわけではない。それぞれに役作りをさせて(名前や性別・性格など固有名詞を考えさせて)一人ひとりの存在感を持たせる。また、同じ言葉の繰り返しが続く場合でも、アクセントの位置、強弱、クレッシェンド等の工夫を常に考えさせながら練習を進めると、主人公意識を持てる。

○ どんどん指揮!
 ダイナミクス(強弱)やテンポの変化は、声の出し手だけではなかなか客観的につかめないもの。だから、遠慮しないで指揮をおく方が効果的である。



5 発表段階でのコツ!

○ 立ち位置で大きく変わる
 お客さんを囲むように立つとステレオ効果が広がる。主人公を一段高い位置に立たせるとそれだけで声が通るようになる。手前から奥に向かって斜めに立つと音に立体的な深まりが生まれる。並ぶ順番を変えるだけで声の大きさが変わることもある。

○ 出だしの工夫
 大きな発表会に緊張は付き物。最初の一声が勝負となる。初めてで自信のなさそうな子どもたちであったら教師が最初の一言を出してあげる等の配慮があっても良い。スタートから全員が声をそろえるのはかなり息が合わないと難しいので(勿論成功すれば最高にカッコいいのだが)題や1フレーズをソロが発声する、指や足で音を立ててテンポをカウントする等の工夫があると安心である。


6)評価・保存段階でのコツ!

○ 的を絞った評価を!
 練習段階ならば、「今日は声の大きさだけを評価」というようにポイントを絞って評価していく方が進歩が見えやすく取り組みやすくなる。発表後のまとめの評価でも、一番がんばったこと一番がんばった人、一番伸びたこと等にポイントを絞ってコメントする。

○ 保存のポイント!
 ビデオに撮るのが一番簡単な保存方法だが、できればステレオマイクを接続して高音質で録音したいところ。単一指向性のマイクを使うと、声を偏って拾ってしまうので注意が必要。MDで生録しながら練習すると、直ぐに自分たちの実力を顧みることができて効果的。

7)その後の発展(今後脚本化できそうな教材)

○ 授業や日常生活の中での群読
 群読の発表が成功したら是非その後の日常を是非群読チックなものにしていって欲しい。というよりもしぜんとそうなっていくものである。掃除の時に「はじっこを掃くときは、サッサッサッサ」とかけ声がリズミカルに湧き上がったり、授業のまとめを簡単なリフレインにしたり。(本書の実践参照)簡単なもので良い。ノリと楽しささえ共有し続ければ次の詩に取り組む時に大きく成長を感じることができる。群読は奥が深いが、けして難しいものでは無いのである。自由に楽しく!共に盛り上がりましょう!


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U 群読指導のポイント 第2章 物語            物語の研究部(まとめ 松本順子)
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1 原文を選ぶ段階でのコツ・留意点

 群読の教材は、日頃使っている国語の教科書の物語教材から選ぶといいだろう。
 選ぶポイントは、

 (ア)文体に音声化するのに適したリズムやうねりがある
  (イ) 複数の人物が登場するもので、ソロ、アンサンブル、コーラスなどが生み出せる可能性がある
 (ウ)表現が説明的であるよりは描写的であり、会話と人物の内言語と描写とがバランスよく組み合わ
   されたものなど3点を考えにおき、選ぶといいだろう。

  国語の教科書の中から、教材を選べないときは上記のポイントを含んでいる文学教材や民話の中から選ぶ。



2 脚本を作る段階でのコツ・留意点

 群読では劇と違い、せりふもト書きの部分も、行動の主体である登場人物が読む。一つの文でも、主体が変われば読み手も二人で読むことがある。語り手は、人物にかかわらない情景描写を読むことになる。

(1)最初は、教師が作った脚本を用いる。脚本は地の文を生かし、場面の変化や登場人物の行動描写、情景描写をとらえながら「分読」「読み手の配分」をする。

(2)子どもたちがグループでの話し合いで脚本原案を作成する。物語を読みあい、情景を思い浮かべ「分読」をきめ、登場人物を確認し、ソロやアンサンブル、コーラスに分け、読みの分担をきめる。



3 子どもなどに投げかける段階でのコツ・留意点

(1)「脚本を読んでみよう」と呼びかけ、最初は一文読みをする。一文ずつ順に回し読んでいく。こうして、全員がどの分も読めるようにする。

(2) 回し読みしていくなかで、友だちの声の質が分かってくる。そこで「声質を考え、だれがどの役がいいのか、検討してみよう」と投げかけ、読みの分担をきめる。

(3) ひととおり読めるようになったら「役づくり」をさせる。たとえば「“おむすびころりん”でのソロ役は、どんなおじさん? アンサンブルのねずみは、どんなねずみたち?」と投げかけ「その人になったつもりで読んでみよう」と読ませる。そうすることで、そ の他大勢のなかに個人が埋没することなく、個性表現も可能になり、読み手も満足するし、表現もぶあつさを増すようになる。

(4) 場面を盛り上げる技法を考える。ひとつのグループに練習成果を発表させ、どうすればもっと良くなるのかを話し合わせ、感想を述べ合うなかで、教師はいろいろな技法を指導し、全体のレベルをあげていく。

 どんな技法があるかは「家本芳郎著『群読をつくる』高文研」を参考にしたい。


4 練習段階でのコツ・留意点

(1)教師が範読をして見本を示すほかに、子どもたちの力を引き出す教師の指導言が大切。たとえば、「大勢で読み出すときには、今から読むぞ!と心に決意し、眼をいっぱいに見開いて自分のいちばんいい顔をして読もう」「前の人が読んでいるときも、心の中で一緒に読みなさい」というように。

(2)グループ内で評価しあい、個々の良いところを見つける。さらにもっと良くなるところを見つけあい、一人ひとりの課題を教えあうことによって、さらに、挑戦させる。このことで、グループの意欲が高まる。


5 発表段階でのコツ・留意点

(1)隊列を考えさせる。発表する隊列によって、聞き手に与えるインパクトは変わってくる。また、立つ・座る・後ろを向く・中腰になるなどの姿勢、動作を入れることも効果的であることを助言する。

(2)グループのリーダーが、手や目で合図したり、手拍子や足で床をたたいてリズムをとったりして、指揮することを教える。

(3)BGMや効果音、手拍子、楽器や扮装などを効果的に使い、情景描写のイメージを盛り上げる方法を示唆する。



6 評価・保存・発展化段階でのコツ・留意

(1)グループ発表の相互評価では、教師からの観点(取り組み過程でのグループ協力性はどうか、分読分担は適切か、表現はよく工夫されていたか、感動を与えたか)から3つぐらいを挙げ評価する。
   また、グループでの評価担当制をとる。それは、どのグループの発表はどのグループが評価するかをあらかじめきめておく方法。最初は、2〜3つの良かったところ・発見したところ・こうすればよいことを付け加えて評価させる。その評価について、教師がさらなる評価を加えると、子どもたちの鑑賞力が伸びていく。

(2)群読は、音声言語表現の特徴として読み上げれば瞬時に消えてしまう。実際に眼や耳で受け止めたものにはかなわないが、ビデオやカセットテープ、MDに録画をして保存する。ビデオやMDは、自分たちの練習や発表を即見ることができ、自己評価に役だつことで、群読のレベルアップを図ることができる。

(3)発展として朝のミニタイムや日常の学級活動、学年や全校の児童会活動にも拡げ、子どもたちの表現学習として位置づけたい。



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U 群読指導のポイント 第4章 わらべ歌       わらべ歌の研究部(まとめ 長塚松美)
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1 まずは、『わらべ歌』って何?

『わらべ歌』────  日本の伝承童謡をいう。
 子どもの頃におばあちゃんから教わった「ずいずいずっころばし…」や「一羽のカラスがカアーカアー…」などを思い出しませんか?
 路地裏で、年上のお姉さんから小さなぼうやまで、何人もの近所の子らが集まって遊んだ時に歌ったり、火鉢でおもちを焼きながら昔語りの合間におばあちゃんが口ずさんでいたり…、そんな懐かしいにおいのするもの、それが『わらべ歌』
 近頃の若いおばあちゃんは、わらべ歌の一つも口ずさめないかな?それに、近頃では、同じ年齢の子、クラスのお友だちとしか放課後遊ばなくなった子どもたち。遊ぶどころか、塾通いに忙しい子どもたちにとって、異年齢のかかわりなんて、とんとご無沙汰って感じかな?
 同年齢の子ども同士のかかわりだけだと、小さい頃はわらべ歌を知らずに過ぎてしまい、大きくなったら知らないものは歌えない、知っていても小学校高学年ともなれば、別の遊びで忙しい。つまりは、誰もわらべ歌という存在さえも口にしなくなってしまう。
 そんな寂しいことにならないように、教室に『わらべ歌』という文化を復活してみませんか。

2 『わらべ歌』と群読

「とおりゃんせ」というわらべ歌がある。遊戯唄のひとつであるが、ふつう問答風に合唱と独唱を繰り返しながら遊ぶ。役割でいうとAが門番たち。Bが参詣人。
 A  とおりゃんせ とおりゃんせ
 B  ここはどこの細道じゃ
 A  天神さまの細道じゃ
 B  ちょっととおして くだしゃんせ
 A  ご用のないものとおしゃせぬ
 B  この子の七つのお祝いに
    お札をおさめにまいります
 A  いきはよいよい 帰りはこわい
    こわいながらも 
    とおりゃんせ とおりゃんせ

 また、「はないちもんめ」はABふたつのグループの対話と合唱で遊ぶ。
 AB  もんめもんめ はないちもんめ
A    かってうれしい はないちもんめ
B  まけてくやしい はないちもんめ
A  となりのおばさん ちょっときておくれ
B  おにがいるから いかれない
A  おふとんかぶって ちょっときておくれ
B  おふとんびりびり いかれない
A  おかまかぶって ちょっときておくれ
B  おかまそこぬけ いかれない
 A  あのこがほしい
  B  あのこじゃわからん
A  このこがほしい 
  B  このこじゃわからん
 A  そうだんしよう 
  B  そうしよう
AB  きーまった!
 A   ○○ちゃんがほしい 
  B  ○○ちゃんがほしい
AB じゃんけんぽん
? かってうれしい…
 こうみていくと、わらべ歌は群唱を基本に、ソロ・アンサンブル・コーラスによる分唱表現によって遊んでいたことがわかる。今日の群読の基本は、すでにわらべ歌に表現されていたのである。分唱・分読は子文化の特質なのだろう。


3 そこで『わらべ歌』の掘り起こし

『わらべ歌』というと、ほかにどんな歌を思い出すかな?知らないようでいて意外と知っているかも?子どもたちにも聞いてみよう。自分も思い出してみよう。
 @ 子どもの知っている『わらべ歌』
    幼稚園や保育園でけっこう歌ったことがあるみたい。
 A 自分が知っている『わらべ歌』
    子どもの頃を思い出すと次々と湧いてくる。さわりだけでも思い出したらしめたもの。
 B 本で調べた『わらべ歌』
   「わらべうた」(岩波文庫)は詳細な解説と注釈・楽譜もついている。福音館書店「にほんのわらべうた」(近藤信子著)はCDと楽譜・遊び方の写真も掲載されている。
 C 地元で歌われている『わらべ歌』
    案外、身近な人が歌っているかも。
 D テレビで流れる『わらべ歌』
    教育テレビ「にほんごであそぼ」がお奨め。覚えている子も多く、歌いやすそう。
 E そして本書に載せた『わらべ歌』
    遊び方がわからなかったら、いつでもお気軽に尋ねて!


4 『わらべ歌』を学級で取り入れる意味

@ 子ども同士のふれあいを深める
   ・学級に馴染めない子が、隣りの子と手をつないだ瞬間の表情を思い浮かべてみて!
   ・けんかの仲直りにも使える!
 A 心がひとつになる
   ・『群読』とは違うようでいて、根底はひとつ。一緒に歌うことで一体感が生まれる。
 B 表現することが楽しくなる
   ・歌詞が短いのが魅力。すぐに覚えすぐに体が動き出す。何度も何度も繰り返したくなる。
 C ことばあそびとしても発展する
   ・替え歌を作って楽しむ子どもも、きっと登場するはず。
   ・先生が意図的に替え歌を作るよう投げかけることもできる。
 D 子どもを発達させる
   ・言葉と歌と遊戯をともなうので、子どものからだにリズムを刻み、豊かな表現力を育てる。
   ・丸くなってすわらせたい時、班で集まる時など、あっという間に集まれる。


5 『手遊び歌』からはじめる

『わらべ歌』の『わらべ』という響きは、小さな子、幼児というイメージが強い。高学年・中学生に『わらべ歌』を紹介しても、体を使って表現するにはちょっと無理があるかもしれない。
 そこで、手始めに丸くなって「ずいずいずっころばし」から始めたらどうだろうか。
  ずいずいずっころばしごまみそずい/ ちゃつぼにおわれてとっぴんしゃん
   ぬけた〜らどんどこしょ/たわらのねずみがこめくってチュー/ チューチューチューいどのまわりでおちゃわんかいたの だ〜れ?
 あるいは、ペアをつくって「十五夜さんのおもちつき」などで遊んだら、高学年でものりのり。
   十五夜さんのもちつきは
   トッテンコ トッテンコ/トッテントッテントッテンコ
   さあこねて さあこねて/さあこねさあこねさあこねて
   トーントーントントントン/トントントントントントントン

6 いよいよ『手遊び歌』『わらべ歌』の紹介

 忘れかけているけれど、一度は聞いたこと歌ったことがあるのではないかというものを紹介。
 「山寺の和尚さん」 「おべんとうばこ」 「ゆびきりげんまん」  「いもむしごろごろ」
「坊さん坊さん」  「かごめかごめ」 「いちわのからす」  「くまさんくまさん」
「ゆうびんやさん」 「たけのこ1本」 「おちゃらか」 「げんこつやま」
 「となりのごんべえさん」  「あんたがたどこさ」  「ともをよぼう」

7 先生がやって見せて、楽しさを教えてあげよう! 

 恥ずかしがらずにやって見せてあげよう。こんなに楽しいよ。気持ちいいよ。と、笑顔でやってあげることが第一歩だ。そして、子どもたちとみんなで楽しもう。


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***2004.7.29 東京日本青年会館 第3回群読大会を成功させましょう****

 重水 健介(日本群読教育の会事務局)

  日本群読教育の会 http://gundoku.web.infoseek.co.jp

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