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 続編ニュース 31号                          2004.5.5
 
 ◆目次◆  
       深澤五郎先生の原稿 
       U群読指導のポイント 詩研究部  澤野 郁文先生の原稿    
       整理表

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こんにちは。続編ニュース31号をお届けします。

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 ◆深澤五郎先生の原稿◆      第2章 学級・学年・全校活動の中の群読 小学校
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学級の団結・活性化に! いつでもどこでも群読   千葉市立蘇我小学校   深澤 五郎

〈解説〉
 この群読は4年生37名が学級の団結を期して、学級の愛唱詩集と称して毎日行っているものである。
学級で様々な詩を群読し、日本語の音に身をもって体感してほしいという教師の願いも含まれている。
 私が原案を出してそのまま行ったり、子どもたちと一緒に話し合いながら脚本を作ったり楽しいひと
ときを過ごしている。
 昨年度末の6年生を送る会で脚光を浴び、たくさんの惜しみない拍手をいただいたことが、私も子どもたちも群読に引き込まれたきっかけである。いろいろな作品にチャレンジしている。そのためか、子どもたちも一日のうちにどこかでやらないとちょっと調子が出ない感じで、3年生から続いているわけである。ちなみに、百人一首も3年生から続けているので、暗誦には慣れ親しんでいて、苦にしない様子である。このようにさまざまな実践が、全国に広まれば楽しい学級が増えるのだろうと確信している。

〈読み手〉
ソロ           1〜6
アンサンブル AからF   6・7名 (アンサンブルは 各班6、7名を2班で組み合わせる)
コーラス男       17名
コーラス女       20名
コーラス全員      37名
(全37名)

〈演出ノート〉
・詩『きかん車』を学級が団結して進む姿として表現しようと子どもたちに話した。
・ソロパートの分担は各班の代表を選ぶようにした。適宜、交替させてもよい。
・ソロ、アンサンブル、コーラスを漸増法により人数に変化を加えて、交替して発声する楽しさを味わえるようにした。加えて、声の強弱による変化も工夫できるようにして、「きかん車」の走る様子を想像しながら楽しく・力強さもイメージしながら群読するように話した。


〈脚本〉

《省略》



〈発展〉
 
 学級での群読から6年生を送る会への継続があり、子どもたちも慣れてきている。まさにに「継続は力なり」であるとしみじみと感じる。ひとつの学級の文化と化した感がある。AからFのアンサンブルや男女ABなど2グループ?3グループの組み合わせなど、さまざまに変化することが、学級を綾なす人間関係のようで楽しいものである。
 グループの組み換えは、いろいろ変えられるので子どもたちでも楽しめる。数の増減・強弱など友だちとの関わり合いが目に見え、声で変化していく楽しさが味わえた。子どもたち自身が工夫することによって、よりよい表現へと向上的に変容していくことを実感できる。これは、子どもたちの集団として関わることの喜びが声の表現となって体感できることのすばらしさが群読にあるのではないかと考えている。

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 ◆U 群読指導のポイント   ◆詩研究部  澤野 郁文先生の原稿             
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1)原文を選ぶ段階でのコツ!
○ 気に入った文章なら何でもOK!
「どんな教材が群読に適していますか?」「この詩を群読にしてみたいと思うのですけれどもできるでしょうか?」というような質問をよく受ける。そんな質問にはこう答えることにしている。「あなたが気に入っていればどんな文も群読になりますよ!」。
 群読はメロディーのない合唱と同じ。作曲家が詩をみて楽譜を書き出すように、どんな詩でも群読にアレンジしていけるのだ。臆さないでどんどん挑戦してみることである。

○ 一から原文を探すなら
 群読に挑戦してみたいのだがどの文が良いのだろうとお悩みの時は、まず気に入った詩を探してみなければならない。そんな時は、市販の脚本集をまず開いてみよう。(もちろん本書もイケる)そして小さな声で良いからリズムに乗ってつぶやいてみよう。自分のクラスの子どもたちや発表の場をイメージしながら。すると、「あ、これおもしろそう」と感じるものがあるはずである。
 教科書や図書館の本を手当たり次第読んでみるのも良い。その時も前述のように「子どもたち」「発表の場」をイメージしながら。「この台詞、いつも元気な○○君が読んだらいいカンジだな」等と考えながら探すのだ。それだけでワクワクしてくる。
 さらに、次のような点を押さえると効率的である。
 ア 何をねらった群読なのかをはっきりさせて原文を選定する。
  ・ リズムやハーモニーを楽しむための群読
   (例)祭りだわっしょい 地引あみ 等
  ・ 教師の思いを伝えるための群読
   (例)教室はまちがうところだ 学級開きで使う詩 等
 イ リズムやハーモニーを楽しむための群読の場合の選定の視点
  ・ オノマトペがたくさん使われている詩
   (例)おがわのマーチ
  ・ 七五調、五七調の詩
   (例)地引あみ
  ・ 人称変化が多い詩(登場人物がたくさんの詩)
   (例)大きなかぶ
  ・ 言葉遊びができる詩
   (例)あいうえお・ん
  ・ 早口で言うとおもしろい詩
   (例)早口言葉
 ウ 教師の思いを伝えるための群読
  ・ 教師の伝えたいことがストレートに表現されている詩
  ・ 1回範読したら、すぐに子どもに読ませることができる詩

2)脚本をつくる段階でのコツ!
○ 日常に見つけられる多くのヒント
 TVのCMや番組のBGM・台詞の中に商品名のリフレインやリズムの取り方等多くのヒントがある。
 ちょっと気をつけて観ればどんどんアイディアが浮かんでくる。合唱曲や交響曲等の名曲からクラブ系のポップスまで音楽は勿論アイディアの宝庫である。また、演劇もしかり。取り組む原文を決めたら、常にアレンジのヒントを探しながら生活すればいくらでも情報を手に入れることができるということである。

○ リズムを出すか出さないか
 詩の場合、前述の通り大きくリズミカルかそうでないかの2つに分かれる。
リズムを出す場合、どの言葉でどんなリズムにするかをまず練る。詩の中にある言葉をリフレインしても良いし、擬音・擬態語を挿入しても良い。
 次に、テンポや繰り返しの回数等を考える。
最後に、詩の本文をどの音符でのせるかを工夫する。例えば同じ4拍でも「まーつーりーだー」という4分音符と、「まつりだまつりだまつりだまつりだ」という16分音符では、全く違った感じになる。
 その辺を吟味するとますます楽しくなる。
 リズムを出さない場合は、まずテンポを考える。ゆっくりか?ちょっとはやめか?テンポが変わる場合もある。
 次に、じっくりと一人で読ませたいところ、みんなで大きく斉読したいところを決める。さらに、繰り返しや漸増法、追いかけ等の技法を使うと効果的なところを見つける。
 (例)雨がたたみかけるように降ってくる様子の表現
ソロ つぎからつぎへと
+アンサンブル ざかざかざかざか
+コーラス   ざかざかざかざか   (漸増法)

語り手1 つぎからつぎへと ざかざかざかざか ざかざかざかざか 
語り手2          つぎからつぎへと ざかざかざかざか
語り手3                   つぎからつぎへと・・
                   (追いかけ)
 工夫のしどころであるが、技法は使えばよいというものではないので、あくまでも詩の内容を訴えたり表現したりするときに有効かどうかで厳選しなければならない。

○ ノッてきたら自由に創作!
 リズムや技法を使ってどんどん楽しく工夫したいと思っても、なかなか原文の中からきっかけがつかめないというときは、思い切って創作文を挿入するという手もある。原文を役割読みで進め、場面が変わる部分に創作の詩を挿入しリズミカルに群読して変化をつける、というように。

3)生徒などに投げかける段階でのコツ!
○ 模範は必要!
「もっと強く!」「もっと気持ちを込めて!」という指導言は、分かりづらいもの。初めて群読に挑戦する子どもたちであれば全く理解できない。思い切って教師が模範を示すことは絶対に必要である。といっても、シナリオのすべてを通す必要はない。出だしや、クライマックス等のピンポイントを、びしっと聴かせるのである。

○ 職員群読チームがパフォーマンス!
 全校が相手だったり、取り組み期間が短かったりすると、やはり完璧なお手本が必要になる。本書に付属するCDを活用しても勿論良いのだが、教師集団で練習して披露すると効果抜群。「先生やるなー」と、みんなノッてくること間違いなしである。

4)練習段階でのコツ!
○ まずは斉読!
 意外と大切なのが精読。技法やアレンジなしで原文のまま、あるいはシナリオをみんなで声を合わせて読む。詩の持つ雰囲気やテンポを全員で共有するのである。初めは教師がセンテンス毎に区切りながら読んで復唱させる、声がそろってきたら自分たちだけで通して斉読というように、丁寧に練習したい。

○ グループで工夫してコンクール!
 小グループで練習し、評価し合うというのもお互いの良さや工夫を学び合うことができて効果的。その場合、最終的には全体で取り組むのだからいたずらに競争心をあおるのではなく他グループの良さをどんどん吸収させる方向で進めなければならない。「まつりだ!の部分の読み方は2班と3班のどちらが良かったかな?」「3班の方が勢いがあって良かったと思います」「そうだね。じゃあどの班も3班の読み方をコピーしよう」というように。

○ その他大勢でなく
 コーラスの部分などは、大人数だからといって責任が軽いというわけではない。それぞれに役作りをさせて(名前や性別・性格など固有名詞を考えさせて)一人ひとりの存在感を持たせる。また、同じ言葉の繰り返しが続く場合でも、アクセントの位置、強弱、クレッシェンド等の工夫を常に考えさせながら練習を進めると、主人公意識を持てる。

○ どんどん指揮!
 ダイナミクス(強弱)やテンポの変化は、声の出し手だけではなかなか客観的につかめないもの。だから、遠慮しないで指揮をおく方が効果的である。

5)発表段階でのコツ!
○ 立ち位置で大きく変わる
 お客さんを囲むように立つとステレオ効果が広がる。主人公を一段高い位置に立たせるとそれだけで声が通るようになる。手前から奥に向かって斜めに立つと音に立体的な深まりが生まれる。並ぶ順番を変えるだけで声の大きさが変わることもある。

○ 出だしの工夫
 大きな発表会に緊張は付き物。最初の一声が勝負となる。初めてで自信のなさそうな子どもたちであったら教師が最初の一言を出してあげる等の配慮があっても良い。スタートから全員が声をそろえるのはかなり息が合わないと難しいので(勿論成功すれば最高にカッコいいのだが)題や1フレーズをソロが発声する、指や足で音を立ててテンポをカウントする等の工夫があると安心である。

6)評価・保存段階でのコツ!
○ 的を絞った評価を!
 練習段階ならば、「今日は声の大きさだけを評価」というようにポイントを絞って評価していく方が進歩が見えやすく取り組みやすくなる。発表後のまとめの評価でも、一番がんばったこと一番がんばった人、一番伸びたこと等にポイントを絞ってコメントする。
○ 保存のポイント!
 ビデオに撮るのが一番簡単な保存方法だが、できればステレオマイクを接続して高音質で録音したいところ。単一指向性のマイクを使うと、声を偏って拾ってしまうので注意が必要。MDで生録しながら練習すると、直ぐに自分たちの実力を顧みることができて効果的。 

7)その後の発展(今後脚本化できそうな教材)
○ 授業や日常生活の中での群読
 群読の発表が成功したら是非その後の日常を是非群読チックなものにしていって欲しい。というよりも自然とそうなっていくものである。掃除の時に「はじっこを掃くときは、サッサッサッサ」とかけ声がリズミカルに湧き上がったり、授業のまとめを簡単なリフレインにしたり。(本書の実践参照)簡単なもので良い。ノリと楽しささえ共有し続ければ次の詩に取り組む時に大きく成長を感じることができる。群読は奥が深いが、けして難しいものでは無いのである。
 自由に楽しく! 共に盛り上がりましょう!


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***2004.7.29 東京日本青年会館 第3回群読大会を成功させましょう****

 重水 健介(日本群読教育の会事務局)

  日本群読教育の会 http://gundoku.web.infoseek.co.jp

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