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 続編ニュース 27号                         2004.5.4
 
 ◆目次◆     
「片桐実践に学ぶ」毛利豊先生の原稿 
    はじめに    重水の原稿    
    終わりに〜「日本群読教育の会」へのおさそい〜毛利豊先生の原稿
    整理表

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 こんにちは。続編ニュース27号をお届けします。

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 ◆片桐実践に学ぶ◆               毛利 豊
 
(片桐実践は、ニュース14号に掲載)
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 高校生ともなると、ずいぶん高度な群読に取り組めるのだなと、しみじみと考えさせられた。
 片桐先生の実践から四つのことを学びたい。第一は、難解な漢詩を群読で音声「表現」させることで、感性的に「理解」させようとした点である。
 寓意に満ちた象徴詩「飲酒」における作者陶潜の「真意」をめぐっては古来から議論され、今だに謎が多かった。それを、時代も民族も境遇も違う日本の高校生に、文献研究によらず、音声表現と感性で探り当てさせようというユニークな手法である。
 第二は、脚本づくりのために「話し合い」が重視されている点である。個人では思考停止に追い込まれがちな難解な謎解きも、小集団でやれば持続性と深まりとが保障されやすい。
 第三は、話し合いの中に「書く」という文字表現を埋め込んだことである。これによって〈この詩の中心部分はどこか〉という目的意識が明確になり、〈「真意」とは何か〉と思考が焦点化したのである。
 第四は、同じ詩を複数グループで発表し合うことによって、学び合えるという点である。解釈の多様性だけでなく、その表現法のそれにも目を開かれる。同じ「強調」でも、漸減法(その一)と繰り返し法(その二)のそれぞれの風趣を味わえるのである。 それにしても、その二のグループが「還る」に詩の中心を見いだしたことに驚嘆する。陶潜の詩に頻出する「帰鳥」の形象は、官を辞して帰農した自況である点では諸説一致しているからである。心の持ち方一つで人境に居ながら隠遁できるのさと、漢の東方朔ばりの東洋的唯心論をうそぶき、同僚の相次ぐ誅殺と政争と権力の監視の中で韜晦を決め込んだ陶潜の「帰鳥」に託した隠喩は、千六百年の時空を超えて、高校生たちに伝わった。「言を忘る」も、仏教(禅)や道教の教えを知らずとも、言葉の有限性を嘆く世代には、感得・共感できたのかもしれない。
国語科の四領域を串刺しにし、古人の隠された「真意」を喝破させた、驚異的な群読実践である。

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 ◆はじめに     重水の原稿◆
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わたしは中学校に勤務している。先日、子どもたちが、学年教師の結婚を祝う群読を学年集会で行なった。また、昨年の文化祭では、全学年から群読の出し物があった。今年の選択国語の授業では「声を出す学習」として通年で群読を取り上げるという。学校に、群読が根づいてきたことを実感する。
 わたしがはじめて群読を知ったのは、24年前である。所属する研究会で、家本芳郎先生の実技講座に参加したときだった。群読の意味や技法を学び、グループごとに「雨」や「平家物語」を発表したことを思い出す。その後、学級や学年の活動、行事等に群読を取り上げてきた。しかし、わたしの群読指導は自己流の域を出ず、指導に行きづまることことも多かったので、その後も、各地で開かれた家本先
生の群読講座にくりかえし参加して学習を続けてきた。
 日本群読教育の会は、そのような、群読教育の実践や研究に関心をもつ教師が家本先生のもとに集まり、十数年前に発足した。その後、会員を増やしながら、会則を整え、2002年夏、東京にて第1回全国大会を開催した。昨年は湯布院で第2回全国大会を行ない、大会記念として実践記録集『いつでもどこでも群読』を刊行した。本書は、その続編となる位置づけである。
 第一章では、会員のすぐれた実践記録を収録し、学校や地域のいろいろな場面で群読をどのように活用したか報告してもらった。さらに、5名の編集委員が「各実践に学ぶ」というコメントをつけ、実践上参考になる点や教訓を解説した。
 第二章では、本会の詩・物語・古典・わらべ歌の各研究部が実践の要点をまとめた。本会の研究部活動は緒についたばかりだが、今後も各分野において研究をすすめる予定である。
 第三章では、会員の自作脚本を収録した。あわせて、演出ノートとして、群読をするときの工夫や効果的な技法、指導上の留意点を付記した。
 本書の作成にあたっては、「子どもたちの表現力を高め、全国各地に楽しい群読の声が響き、同時にわたしたちの指導力も向上していく・・」そんな願いを込めて、日本群読教育の会の総力をあげて取り組んだ。本書を読んで、群読に対していっそうの親しみを感じていただけたら幸いである。

                          日本群読教育の会 事務局長 重水 健介

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 ◆終わりに 〜「日本群読教育の会」へのおさそい 〜毛利豊先生の原稿◆  
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 本書に収められた群読の実践記録をお読みになって、読者のみなさんは、どう思われただろうか。本会の前著『いつでもどこでも群読』は、好評のうちに、初刷分を1年も経ずに完売した。読者からは、「どの実践もとてもレベルが高い」「非常に充実した内容だ」と賛辞をいただいた。しかし同時に「群読は難しいもの」「かくあらねばならぬもの」と固定観念をもった人もいるのではないかと危惧する。「群読」は、けっして難しいものではない。「複数の人間が群れて声を出せば、それはすなわち群読である」これくらい楽に考えた方がよい。群読はまだ歴史が浅く、私たちも、迷い、手探りしながら試行錯誤をくり返している。この先、どう生成発展し、形態・領域・応用・機能などが変化拡充して行くかは、未知数である。みなさんも本会に参加され、私たちと共に創造の旅に出てみませんか。

《日本群読教育の会》
◇ 参加資格・義務―群読に興味のある人なら誰でも自由に参加できます。
         会費・入会金などは「無料」。義務等も、いっさい「無し」。
◇ 会員の特典―@情報満載のお得な「会報」や「通信」が、メールにて不定期に送られてくる。
       A本書のような実践記録集の執筆に、毎年、立候補できる。
       B大会参加費等が、割引になる。
◇ 入会方法― メールなどで、HP・代表・事務局長・会員などに、入会の意志と自分の氏名・
    連絡先を知らせるだけで、完了。

 この記録集に収められた実践に触発されて「自分もやってみようかな…」と読者が思って下さること
が、私たちの真の願いである。そして共に新しい文化の創造活動を、楽しみながら追究し広げてゆけた
なら、執筆者一同、これにまさる喜びはない。
                
                 日本群読教育の会 常任委員・古典研究部部長   毛利 豊


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***2004.7.29 東京日本青年会館 第3回群読大会を成功させましょう****

 重水 健介(日本群読教育の会事務局)

  日本群読教育の会 http://gundoku.web.infoseek.co.jp
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