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続編ニュース 17号 2004.4.20
◆目次◆
書名の募集
V 資料 群読脚本 上村 弘先生の原稿
V 資料 群読脚本 秋元 紀之先生の原稿
実践のポイント「古典」・・・毛利 豊先生の原稿
写真についての連絡(修正)
整理表
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こんにちは。続編ニュース17号をお届けします。
執筆者のみなさんから毎日続々と原稿が届いています。ご多忙の中、そして、お疲れのところを、ありがたいことだなあ、と心でつぶやきながらメールで原稿をお受け取りしています。
今回のニュースでは、秋元紀之先生と上村弘先生からいただいた、Vの群読脚本 と、Uの古典指導のポイント(毛利豊先生による第1案)をご紹介します。
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◆書名について、いい案をお寄せください。
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ニュース13号でお知らせしたように、いまつくっている本の名前を募集しています。この本は昨年の湯布院の大会を記念して発行した本の続編にあたるものです。昨年の書名は「いつでもどこでも群読」でした。高文研の山本さん発案のすばらしいネーミングでした。
今回の本は、「続 いつでも どこでも 群読」という仮の名前で編集作業をすすめていますが、あくまでも仮です。なにかいい書名はありませんか。募集します。当選者には、新刊5冊贈呈します。
いま、お二人の方から次の案を出していただきました。みなさんもアイデアをどしどしお寄せください。
『もっともっと群読★おかわり』
『やっぱり どこでも 群読』
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◆V 資料 群読脚本 上村 弘先生の原稿
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★宮沢賢治作「諸君よ」 指導者 上村 弘★
<解説>この群読は横須賀市立池上中学校の第7回3年生を励ます会で、卒業する3年生が在校生に寄せる詩として発表した。この詩は宮沢賢治の未稿からわたしが構成した。 学年には特有の文化があったが、「心騒ぐ青春の歌」を愛唱歌としていたこの学年にあって、ことあるごとに読まれた詩である。
<読み手>4人。ABが男子。CDが女子。ピアノ伴奏。
<演出ノート>
1 あまり気張らずに、しかし、ヒロイックな詩情をこめて読む。
2 ピアノ伴奏をつけると群読が映える。
a 諸君よ、紺色の地平線がふくらみ高まるときに、
諸君はそのなかに没することを望むか
いや、諸君はこの大地における
あらゆる形の山岳でなければならぬ
b 諸君は、諸君の未来圏から吹いてくる
この颯爽たる風を感じないか
それは一つの送られた光線であり、
決せられた南の風である
c 諸君は、その時代に強いられ、率いられて
奴隷のように忍従することを望むか
むしろ、諸君よ、さらに新たな正しい時代をつくれ
d 宇宙は絶えずわれらに従って変化する
潮汐や風、
あらゆる自然の力を用い尽くすことから一歩進んで
諸君は、新たな自然を形成するのに努めねばならぬ
d 新しい時代のコペルニクスよ
あまりに重苦しい重力の法則から
2つの銀河系統を解き放て
a こ新しい時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から動く世界を
すばらしく美しい構成に変えよ
b 新しい時代のダーヴィンよ
銀河系空間の外にも至って
さらにも透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
c 新たな詩人よ 雲から光から嵐から
新たな透明なエネルギーを得て
人と地球とのとるべき形を暗示せよ
全員 諸君はこの大地における
あらゆる形の山岳でなければならぬ
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◆V 資料 群読脚本 秋元 紀之先生の原稿
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★山村暮鳥作「人間の勝利」 指導者 秋元 紀之★
<解説>この群読は横須賀市立池上中学校の第11回3年生を励ます会で、卒業する3年生が在校生に寄せる詩として発表した。
学年には特有の文化を育てようとしたが、詩の群読もその一つで、この詩は、学年活動のなかで、しばしば読まれた。「人間はみな苦しんでいる」このフレーズが流行した。
<読み手>4人。ABが男子、CDが女子。ピアノ伴奏。
<演出ノート>
1 堂々と思い切り感情をこめて読む。
2 ここでの読みの難しい用法は「たたみかけ」である。息をはずさずにたたみこむように読むと、迫力のある読み方ができる。
3 ピアノ伴奏をつけると群読が映えた。
A 人間の勝利
B 人間はみな苦しんでいる
CD 何がそんなに君たちをくるしめるのか
B しっかりしろ
C 人間の強さにあれ
D 人間の強さに生きろ
B くるしいか
A くるしめ
全 それがわれわれを立派にする
B みろ 山頂の松の古木を
C そのこずえが烈風を切っているところを
B その音の痛々しさ
D その音が人間を力づける
A 人間の肉に喰いいるその音のいみじさ
CD 何が君たちをくるしめるのか
A 自分もこうしてくるしんでいるのだ
C くるしみを喜べ
A 人間の強さに立て
D 恥辱(はじ)を知れ
B そして倒れる時がきたならば
ほほえんでたおれろ
C 人間の強さをみせて倒れろ
B 一切をありのままにじっと凝視(みつ)めて
全 大木のように倒れろ
C これでもか
CD これでもかと
重いくるしみ
A これでもか
AB これでもかと
重いくるしみ
全 重いのが何であるか
D 息絶えるとも否と言え
AB 頑固であれ
全 それでこそ人間だ
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◆「U群読指導のポイント」(古典研究部) 毛利 豊先生の原稿
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古典研究部の部長である毛利豊先生に、もとになる原稿を書いていただきました。これをもとに、研究部内で検討・意見交換して、実践のポイントを完成させていきます。
「U群読指導のポイント」(古典研究部) ― 原案 ―
A 既成の脚本を使用する場合(初級)
1 学習者に投げかける段階でのポイント。
○「動機付け」を充分にする。
古文は読む障害から内容の理解が難しく、群読するには困難を伴う。そのため、例えば、以下のような興味をもたせ意欲を引き出すことが重要となる。
・ 国語授業などでの既習教材やそれと関連のある文章をとりあげる。
・ 郷土の歴史などにまつわる地域教材をとりあげる。
・ テレビ、マスコミなどでの流行をとりあげる。
・ 先輩や他校の先行実践を聞かせる、見せる。(ビデオ録画、テープ録音)
・ プロの群読、歌舞伎を聞かせる、見せる。(ビデオ録画、テープ録音)
2 練習段階でのポイント
○ 一斉音読を全員で繰り返し、古文音読に習熟する。
学習者の状況によって、指導者が区切りながら音読してみせ、学習者に続けて発音させるような、口写しの指導が求められる。この初めの段階から、「楷書読み」や正しい発音を意識させるとよい。
○ 役割分担を決めて、それぞれのところをパート別・個人的に練習する。
分読は、学習者の声質と文章の内容とが合うように、話し合って決める。例えば板東武者は男声、女性を含む平家勢は女声でというようにである。
○ みんなで「合わせ」て、お互いに気づいたところを批評し合う。
良いところ、悪いところを指摘し合う。こんなふうに読んだらどうかという提案も歓迎する。その場合は、理由を添えること、実際に自分がやってみせることなどに留意すると、具体的で建設的な話し合いとなる。
・ くっきりと発音する「楷書読み」になっているか。
・ 係り結びを強調しているか。
・ 出だしの「高出し」、おわりの「さげ」、途中の抑揚など。
・ イントネーション、アクセント、発音の善し悪し。
・ 擬音語の工夫。
○ 複数グループが同じ脚本でやるときは、別室に分かれて練習を重ねる。
同じ部屋でやるとお互いの練習が聞こえて、気が散ってじゃまになることがある。また、あとでお互いに発表し合う場合でも、発表前にどういうものか大体わかるので興味をそがれる。別室でやると、同じ脚本でもまるで雰囲気の違うものになることがわかって感動する。そして、お互いに「違い」から学びあえるのである。
3 発表段階でのポイント。
○ 音響、視覚効果を演出する。
出だしやどこか音をそろえるところで拍子を活用するとよい。本物でなくても、ホームセンターで小さな角材を買ってくれば、それらしい音が安価で用意できる。剣道場や町内会から借用してくるのも一法である。三味線、笛などの和楽器ももし準備できれば少しなら入れると味が出る。
源平の争乱を描くなら、赤旗・白旗などを準備したい。マフラーやハチマキ、帽子、トレイナーなどで表現してもよい。
○ 発表隊形を工夫する。
並び方も、机とイスで作った雛壇の上に並んだり、「鶴翼の陣」形で並んだりすると、晴れ舞台に立った気分になり、気合いが入る。見栄えもする。
4 評価・保存・発展化段階でのポイント。
○ 相互批評は、プラス志向で。
けなしあうより、ほめ合う方が気持ちが良いし、やる気も出る。実際、学ぼうと思えば、どんなに下手な発表からでも学ぶことはある。もし何も見つからないようなら、それは自分の「学ぶ力」が弱いと反省する方がよい。けなすのは簡単だが、向上しない。学習者が見つけられないときは、指導者が指摘してやるとよい。
○ ビデオ録画、テープ録音をする。
家庭用ビデオカメラやデジカメの動画などで簡単に録画でき、テレビに接続すれば、その場で再生して自分たちの群読をみんなで鑑賞できる。最近では専用の機械もできた。録音テープやでの記録も簡単に再生でき、自分たちの読みを客観化できる文明の利器は大いに活用したい。
○ 映像・音声記録を、ライブラリー化し、次の指導に生かす。
次の学習者のために映像・音声記録として残すことをすすめる。具体的な映像・音声として見聞できれば、後進は、先達が到達したところから、ただちに先に進めるからである。同じ立場の者の姿は、大きな影響力をもつ。
B 与えられた古文で生徒などが脚本をつくる場合(中級)
1 原文を選ぶ段階でのポイント。
○ 原文選びが、全てを決める。― 内在する音楽律を彫り出せ! ―
古典の場合は、どんな文章でもよいというわけにはいかない。文章選びがきわめて重要である。「その原文には、『内在する音楽律』があるか否か」これがポイントとなる。声に出してリズムを生みそうな文章に注目し、それを掘り出すつもりで凝視するとよい。(下の2を参照)
○ 音声として口承されてきた文学や芸能を選ぶ。
一般に、口承されてきた文学や芸能に、音楽的リズムのあるものが多い。例えば、 「軍記物」「歌舞伎」「謡い」などである。それらには、七五調や五七調、対句や反復など、声に出せば自然に
リズムを生むものが多い。逆に、書き言葉(文字)で伝えられたものには、一部の名文を除いて、群読に適さないものが多いようである。
2 脚本をつくる段階でのポイント。
○ 既成脚本の「模写」や「改作」から始めると、コツを会得しやすい。
絵画の上達法に「模写」がある。名作をそっくりそのまま自分の手でコピーする方法である。その過程で、多くの学ぶことがあるからであろう。古典群読も同様、先行実践(脚本づくり)をなぞってみることで、多くの気づきと学びを得る。ただし、全く同じでは単調なので、登場人物の人数を変えたり、文章を短縮したりして、条件を変えた「改作」に取り組むとよい。その作業の中で、群読技法を詳述した理論書(例:家本芳郎著『群読をつくる』高文研)にさかのぼって学習する。その中で、なぜここはこうしてあるのかの「読解」ができるのである。詳しい理論書を1頁から順に読むのは気骨が折れると敬遠する人でも、必要に応じてあちこち探し読みするのなら、案外と主体的に読める。
○ 対句に注目する。
2つのフレーズがペアになっているところはどこか。それは当然、別の人(グループ)が読むことになろう。そこで、分読が必然的に一つ決まる。
(例)女声:平家の方には音もせず、
男声:源氏の方にはまたえびらをたたいてどよめきけり。
○ 人物のセリフに注目する。
人物のセリフは、地の文(説明・ト書き)とは違う人、○○役のひとがよむ。これで、また一つ分読が必然的に決まる。
○ ト書きの性質に注目する。
同じト書きでも、単なる状況説明と人物の心情や胸の内を述べているものでは性質が異なる。人物の心情はセリフと同じ扱いにする。これで、また一つ必然的に分読が決まる。
○ 係り結びに注目する。
係り結びは強調の技法である。ゆえに、主に読むときに強調するようにしたいものである。その注意を促せるような表記上の記号などがあると親切である。
○ 追いかけ読み、乱れ読み、わたり、などにふさわしいところを探す。
老いかけは次々に何かが起きる場面や、一つの劇的場面を強調したい場合に採用する。乱れ読みは戦闘場面や何かが入り乱れている場面で、わたりは長い文章を分読したあとの仕上げでもう一度強調するようにしたい場面でそれぞれ採用する。これで、また一つ必然的に分読が決まる。
○ 総じて、「必然性が、脚本をつくる」。
このように内在するものを彫り出していけば、自然に脚本が仕上がる。作為を捨て、木目に沿って木を割るように、ロダンが大理石の中に埋もれている像を彫りだしているだけだと言ったように、パズルを解くように、順々に分読箇所を決めてゆくとよい。
C 学習者が自分で原文を見つけ、それを群読脚本にする場合(上級)
○ 多くのいろいろな古文にアクセスする。
資料集、古典文学全集、演芸・芸能全集や、ビデオ・テープ・CD・DVDなどの視聴覚媒体、さらにはインターネットなどで、いろんな古文にアクセスできることが、大前提となる。
○ 名文詞華集、既習教材、CD付きの入門書などを活用する。
簡単に手頃な文章を探そうと思えば、このようなものから探すのも一法である。
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◆写真についてのお知らせ(一部修正)
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この本には、写真も載せ、読者に群読のイメージが鮮やかに伝わるようにしたいと思います。群読の発表や練習場面等の写真がありましたら、お手数をおかけしますか、下記の 高文研山本さんまでご郵送ください。
写真は、一編について一葉までとします。白黒でもカラーでもかまいません。写真の裏に執筆者氏名を書いて送付してください。なお、どこに、どの写真を使うかという点に関しては、編集部にご一任ください。
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***2004.7.29 東京日本青年会館 第3回群読大会を成功させましょう****
重水 健介(日本群読教育の会事務局)
日本群読教育の会 http://gundoku.web.infoseek.co.jp
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