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 日本群読教育の会 会報 67号          2005.12.27
    
        発行者アドレス          sakunayo@ngs2.cncm.ne.jp    
        日本群読教育の会HP  http://gundoku.web.infoseek.co.jp
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 ☆目次☆ 
      ★ 随想「ファイト!」             中山 香代先生  
      ★ 会員のみなさんからのお便り     
       ★ 群読教室   「化粧語」          家本 芳郎先生 
      ★ 群読実践の紹介「まつりだわっしょい 玉宮」  柏原 真澄先生
            ★ 群読学習会の報告              海上 和子先生
            〜神奈川県大和市立桜丘小学校にて〜
      ★ 群読冬期研修会の報告                事務局 
      ★ 群読Q&A「学期まとめの群読」       毛利  豊先生
      ★ 書籍紹介 「合唱・群読・集団遊び」     深澤 英雄先生
      ★ 事務局より
      
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 ◆随想 「ファイト!」◆                 中山 香代先生
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  中島みゆきの歌に「ファイト!」という曲がある。以前、CMソングとして
 使われ、最近、槇原敬之のカバーバージョンも出された。
  
  初めてこの歌を聴いたのは高校生だったので、歌の良さを感じるよりも、
 なんて気合のたりない歌い方なんだろうというのが第一印象だった。高校のグ
 ランドや体育館で聞かれる「ファイト!」と言うかけ声とは対照的な中島みゆ
 きの歌声。TVドラマの主題歌や他の歌手に贈った歌ほどメジャーな曲とはい
 えないし、カラオケでそんなに歌われているわけでもない。しかし、どういう
 わけかその歌のフレーズやメロディは一度聞いたら忘れられない。

  ささやくようなみゆきの歌声で「あたし、中卒やからね、仕事をもらわれへ
 んのや・・・」と始まるその曲は、サビの部分で「ファイト!」と歌われる。
  その歌い方に激しさはない。どちらかといえば、「ドンマイ」や「のんびり
 いこう」といった雰囲気だ。こんな歌い方で、聞いている人は励まされるのだ
 ろうかとずっと不思議に思っていた。「 空と君の間に」を歌うような力強い
  
  歌声の方が説得力がある気がするのに・・・と勝手な演出まで考えてしまう。
 歌詞の中に出てくるいろいろな背景を背負った人たちへ向けて、「ファイト!」
 と投げかけられ「闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう・・・冷たい水の
 中をふるえながらのぼってゆけ」と続く。繰り返されるこのフレーズ。歌詞は
 確かに応援歌となっているのだが・・・。

  なんだか忘れられないこの「ファイト!」を、久しぶりに聞くことにした。
  槇原敬之のカバー曲で。やっぱりみゆきに近い歌い方をするものだなどと思
 いながら、仕事帰りの車の中で何回も聞く。気がつけば、CDに合わせて口ず
 さんでいる。「ファイト」と歌うたび、次第に声が大きくなり、元気になって
 いく自分がいる。
 ――ー そうか、だから「ファイト」なのだ。気合がたりないと感じた歌い方は、
 弱さではなく、包み込む優しさだったのだ。創り手とは違う歌手が歌っても、
 その歌の持つ力は失われてはいなかったのだ。

  今年もあと数日。1年間の反省をしつつ、来年へ向けて「ファイト」とつぶや
 いてみる。自分にとってもみなさんにとっても、よい年でありますようにと願
 いながら・・・。

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 ◆会員のみなさんからのお便り◆
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 ★家本芳郎先生ありがとうございました。   ほんの森出版 兼弘 陽子さん
  66号、いただきました。今回もごくろうさまです。重水先生の、家本先生へ
 の思い、会員の皆さんの思いを文字通り代表した感謝の言葉だったと思います。
  
  しみじみと読ませていただきました。思えば、この群読の会は、誰にでもで
 きる、そしてみんなでできる身体表現活動を、既成の団体や政治や諸々の枠を
 とっぱらって、子どもと一緒に学びたい人、自分の技や工夫やアイデアや実践
 や努力をみんなで分け合おうという人たちが、この指とまれ方式で集まって学
 びあおうという、家本先生の提唱から生まれました。
  
  私には、日本の教育や、政治や人々の気持ちがこれからどこへいこうとして
 いるのかとても不安な時期に、自分の意思で動くということはどういうことか
 を家本先生が先頭に立って示してくださったのだと思えてなりません。
  名声を頼むのではなく、権威づけのためでも金儲けでもなく、学びたい人が
 知恵と労力を出し合って、純粋に、一人はみんなのために、みんなは一人のた
 めにつくっていく会です。
  
    そのために家本先生は、無料の出前講座をかって出て全国を走り回られ、会
 のつくり方、志を同じくする人への呼びかけ方、みんなでつくっていくという
 こと、様々なことをていねい伝えてくださいました。だからこの会は、群読学
 会でもなく、資格やステップ制でもなく、学びたい人が誰でも参加できる「群
 読の会」なのだと思います。
   
  66号を読ませていただいて、家本先生の引退という衝撃的なことに出会って
 も、淡々と会の活動が進んでいくのを感じます。こんなすばらしいことはめっ
 たに体験できるものではありません。これからも、守っていく会ではなく、会
 員それぞれの思いがつくっていく会として、地道な活動がつづいていくことと
 思います。そういう力の大きさを、いましみじみとかみしめています。
  
  日本の教育は、様々な困難に出会っても、誰に頼まれたわけでもなく、子ど
 もと学びをつくろうとする教師、そのために手をつなぎ合おうという自らの意
 思を持った教師がつくってきたのだと思います。
  いままでもこれからも。いまあらためてそのことを胸に刻みたいと思います。
                       
 ★これからは、わたしたちが           神奈川 馬見塚 昭久先生
   めっきり寒くなってまいりましたが、お元気にお過ごしのことと存じます。
  会報ありがとうございます。家本先生の突然のご引退には驚きましたが重水
 先生の文を拝読して「家本先生には本当に長い間お世話になってきたんだな。
 いつまでもおんぶにだっこではいけないなぁ」と思いました。
                          
  ★外国の方々と群読で交流                 柏原 真澄先生
  百周年でひな壇を買ってもらい、三学期の群読をどうしたらよいか悩んでい
 ます。先日めでたく、国際理解集会でもブラジルやフランスの交流員さんを招
 いて交流ができました。ALTもサンバを楽しんでくれました。祭りの交流で
「まつりだわっしょい」を披露したのですが、子どもたちは完全に覚えていて、
 すごいノリでびっくりでした。
                             
 ★金木犀のかおり                 神奈川 海上 和子先生  
  会報65号の 随想「金木犀のかおり」を「そうそう」とうなずきながら読
 みました。現在、自分自身がアレルギ−か老化現象かはっきりしないのですが、
 嗅覚が低下し、あらためて「香り・においと記憶」の関係について考えさせら
 れています。   
 
 ★冬期研修会のお礼                   深沢 五郎先生
   どたばたとして参加で申し訳ありませんでした。お話しも十分にできずに、
 失礼いたしました。
  老人ホームやデイケアセンターなどに訪問して群読をやってみようかなと考
 えています。音楽だけでもいいのですが、音楽がどうも?という方もいるので
 す。群読で、十分に満足させられるものがあると思います。
  音楽とセッションしてもいいのかなと構想だけは先んじています。

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 ◆群読教室◆ 「化粧語」                  家本 芳郎先生
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  梁塵秘抄の群読をとりあげたことがある。

  茨小木の下にこそ、いたちが笛吹き猿舞で、掻い舞で、いなご麿賞で拍子つく。
  さてきりぎりすは、鉦鼓のよき上手。

  意訳すると「いばら木の下で、いたちが笛吹き猿踊る、猿踊る。いなごははやし
 立てて拍子を打つ。さて、コウロギは、コロコロリンとかねたたく」となろうか。
  森の音楽隊の話である。
 
  さて、群読するうちに、子どもたちが「囃子言葉を入れていいか」という。
  たとえば、
  
    茨小木の下にこそ、ハア、いたちが笛吹き猿舞で
 
 のように「ハア」の感動詞をはさむと読みに調子が出るからだという。
「おおいにやりなさい」。こうして、囃子言葉をさしこみながら群読を楽しんだ。
  その結果、次のようにような群読になった。

  茨小木の下にこそ、ハア いたちが笛吹き猿舞で、ハア 掻い舞で、ハア 
  いなご麿賞で拍子つく。
  さて、きりぎりすは、きりぎりすは、鉦鼓の、鉦鼓のよき上手。
  ア、ヤンヤ、ヤンヤ ヤンヤヤンヤヤンヤ

  このように短い感動詞をはさみこむことを「化粧する」といい、その言葉を
  「化粧語」という。群読のなかで、おおいにとりいれたい技法である。 

  もっとも、最初は読み手がリズムを整えるために、それぞれが自己流に「化粧」
 したのだが、そのなかの特にすぐれた化粧語が、やがて読みのモデルになり、
 やがて本文に組み込まれるようになったようだう。

  月が出た出た月が出た ヨイヨイ
  
  この「ヨイヨイ」などは化粧語が本文化した例である。
  近年では、作詞家が最初から化粧語を本文に組み込むようになった。

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 ◆群読実践の紹介◆ 
  「まつりだわっしょい 玉宮」〜百周年に寄せる思い    柏原 真澄先生
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  今年度、校内研究で「表現活動部会」の担当となった。年度当初の提案の中
 で「百周年」という行事を見据えて、そこに生かせるものとして「群読」を取
 りあげた。青年部の頃、県の教育研究集会前夜祭で行ったはっぴと豆絞りによ
 る群読「まつりだわっしょい」のイメージがそこにはあった。
  部会提案すると、校長先生をはじめとする強力な部会員の先生方は、次々に、
 それを上まわる案を出してくれた。
 
  豆絞り・はっぴはもちろんのこと、みこし・和太鼓・鳴り物・大うちわ等々。
 この提案は、職員会議でも承認され、さらに職員全体の協力により、数多くの
 小道具や衣装を貸してもらえるはこびとなった。その数や色合いを決めるとこ
 ろまで、忙しい時間の合間をぬって準備をしてくれた。
 
  おみこしは、二年生の生活科を中心に子どもたちがアイデアを出し合い、N
 先生の細やかな配慮と五十二人の子どもたちの手助けによって、素晴らしいも
 のに仕上がった。
  このように、群読は、多くの力が結集されたものとして取り組まれてきた。
  しかし、それは一朝一夕にできてきたものではなかった。一学期に、作って
 いただいた真新しいひな壇で、初めて取り組んだ群読が、山田今次作の『雨』
 だった。 

  何もわからないところからのスタートであるから、最初は、朗読の先生から
 学ぶ機会を設けた。子どもたちはその意をくんでくれ、着実に成果をあげてき
 た。 このように、そのかげには、多くの先生方の助言・支援・励ましがあっ
 た。しかし、何より頑張ったのは「子どもたち自身」なのである。みんなで力
 を出し合うことの素晴らしさを、この群読を通し教師も子どもたちも学んだの
 である。
 
  二学期、運動会の練習に入る前に、ある程度の計画はたてられていた。しか
 し実際に群読の取り組みが始まったのは、運動会を終えた九月二十八日であっ
 た。取り組みを進める中で、多くの職員が知恵を出し合い、各自の特性を生か
 しながら全力でことにあたり、話し合い・検討しあい・修正しあって成し遂げ
 てきたものであった。
 
  音響など、裏方を進んでやってくれた先生たち。子どもたちの動きのひとつ
 ひとつをみんなで考えてきた。群読だけをとっても、こんなに頑張ってきた子
 どもたちであるが、その後に続く歌声が、また力強く、心に響く歌声となった。
  それにはSさんが「百年祭の歌」を提供してくれたことが、大きな影響を及
 ぼしたといっても過言ではない。 
 
  実は、個人的なことだが、偶然にも、Sさんとは、高校の吹奏楽部が初関東
 の時、同じ釜の飯を食べた間柄だった。 この「百年祭の歌」が、また素晴ら
 しかった。子どもたちの気持ちがまっすぐに伝わってきて、聴く人たちの胸に
 響いた歌声であった。
  玉宮小学校の「校歌」「運動会のうた」そしてこの「百年祭の歌」と、子ど
 もたちの発表には、みな、気持ちがこめられていた。
 

  どの歌にも、地域の自然や文化が織り込まれていて、学校を卒業しはなれて
 も、きっと懐かしく思い出し口ずさむような歌ばかりという気がした。
   そしてこの、百周年という時に校歌を歌えることも、子どもたちはもちろん
 のこと集う人たちみんなの喜びとなったのではないだろうか。
  私が卒業した小学校では、百周年の頃、校歌の「曲」がかわった。その小学
 校に学童疎開をしていた、作曲家の先生が新たな曲をつけてくれたものだった。
   
  卒業して何年もたつのに、その先生がピアノを弾きながら、私達と一緒に歌
 ってくれた光景が目に焼き付いている。  玉宮小学校の校歌も藤山一郎先生の
 作曲で、大変素晴らしい曲だ。子どもたちも、百周年の思い出と一緒に、この
「校歌」も「運動会のうた」も「百年祭の歌」も忘れられないことだろう。  
 
  いくつもの出会いがあったこの百周年。黙祷をささげながら、嫁ぎ先の祖母
 のことを思いだしていた。祖母も玉宮小学校の卒業生であった。祖母も歌った
 のかもしれない「運動会のうた」、会場の皆さんも口ずさんでくださっていた。
 すべての流れが、感動の場面だった。これは、子どもたちの努力の積み重ねと、
 先生方の協力、保護者の方々・地域の皆様のご支援、式典にお集まりいただい
 たすべての皆様のおかげである。
  子ども・職員はもちろん、そこに集う皆様の心にも、忘れられない百周年と
 なり得たのではないかと思うのである。
  三学期も、このひな壇で、みんなの力を出し合って群読や歌を頑張っていき
 たいと思う。
 
  余談になるが、郡音楽発表会に出た子どもたちは、この群読練習中は、昼休
 みに全員が集まって練習を頑張ってきた。 この根性のある「玉宮魂」が、音
 楽発表会でも成果をもたらした。
   たくさんの思い出とともに、たくさんの人たちと、忘れられない時を「共有」
 できた喜びで、胸がいっぱいである。
  子どもたちの「表現」は、音声や映像で保管されるということであるが、そ
 こでまたあの瞬間を分かち合えることはもちろんだが、私達の胸にのこる思い
 出は、きっと色あせずに残ることであろう。
 
  末筆ながら、「群読」を全国的に発案し進めてこられた家本先生が、この度、
 惜しまれながら引退された。
  世代はうつりかわっても、私達の心に感動をのこしてくれた「群読」を忘れ
 ることはない。後の世代が、また引き継ぎ発展させてくれることを信じている。
 表現することの喜びを、そしてそれを味わい共有できたことの喜びを、私達は
 心に大切にしまって、これからもまた、日々の実践を、子どもたちや先生方と
 頑張っていきたいと思う。

  ◆最後に「まつりだわっしょい 玉宮」より、一節を贈りたい。
 三年生  「まつりだぞ〜」
 一年生  「みこしがくるぞ〜」
 四年生  「百周年の おまつりだ〜」
 ソロ(六年)
      「むこうはちまき
          きりりとしめて」
  アンサンブル(六年)
      「わっしょい わっしょい」
  コーラス一(四・五年)
 コーラス二(一・二・三年)
      「わっしょい わっしょい」

  みんなで声を合わせて、玉宮小学校百周年をお祝いできたことを、子ども
 ちはきっと忘れないだろう。「おめでとう玉小〜」のあの歌声も。
  これからまた続く百年へも、きっと元気な声が響きわたっていくことだろう。


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 ◆群読学習会の報告 〜神奈川県大和市立桜丘小学校にて〜◆
                 日本群読教育の会事務局  海上 和子先生
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  11月29日(水)に、神奈川県大和市立桜丘小学校における「群読 入門講座」
 にいきました。
  市の特活研究会の研修講座で、「群読とは、群読体験を」ということでした。
  家本先生、重水先生のピンチヒッターということで不安でしたが、両先生の
「入門講座」を参考に2時間の流れを組み立て参加しました。(資料1参照)
  桜台の駅前は、かつては横浜に近いところですが、果樹園や畑が広がり田園風
 景がみられたのでしょう。現在は宅地と会社が広がっていました。でも、桜並木
 の遊歩道が整備され木々にかこまれた静かな学校でした。

 *1で群読の概略説明 「群読をつくる」を読みなおしてにわか勉強です。(15分)

 *2では、理論はさておき、まず声を出しましょうと「ふたり読み」からはじめ
 て「江戸バカ囃子」へとすすめました。(45分)
  最初は、誰でも知っている「さよならさんかく」、約40名の先生方はすぐに
 のり、最後の「ひかるは・・・」のあとは大笑いでした。そこで、私がデイサー
 ビスで行った際、ケアマネージャーの方から、頭のことを気にしている方がいる
 ので「はげあたまではなくて・・・」という申し入れがあったこと。
  そして、子どもたちは「はげあたま」が大好きだが、円形脱毛などを気にして
 いる子がいる場合は、「夜空のお星様」に変える配慮をはなしました。

  次の、「そうだんごと」では、会話文のところはもうその気になって、読んで
 くれました。
 「かたつむり」は、与えられた文を読むだけではなく、子どもたちがつぎ足した
 り創ってみる大切さを話しました。他の例として「なんておもったらおおちがい」
 や「そうだとばっかり」を紹介しました。

  そして、「らいおん」は、文化的な体をつくる一つとして、声の大きさ・強弱
 を使い分ける大切さにふれました。 最後の「らいおーん」は窓の外の、校庭の
 隅のまとあての陰にいる「らいおん」を呼ぶような声がでました。
 「すっとびとびすけ」「地引き網」「江戸バカ囃子」では、脚本の作り方・色々
 なアレンジの仕方にふれました。「すっとびとびすけ」のソロなどすぐ立候補が
 あり、全員リズムにのっていきました。「地引き網」と「江戸バカ囃子」は、通
 して読む時間がありませんでしたが、後掲の実践をからめ、コーラスの読み方や
 声の出し方(無声音など)にもふれました。
「船越囃子」は、横須賀市立船越小学校の五年生担任から、この秋全校集会の出し
 物の一部に「江戸バカ囃子」を取り上げたいと相談がありました。
  しかし、2、3回しか練習時間が取れないことと、他の演目との関係で台本を
 もたせたくないとの制約がありました。そこで、全体を15人ずつ4グループ、
 ソロ10人として脚色しなおしました。また先日、タップダンスの源流でもある
 アイルランドの伝統舞踊「リバーダンス」の足ぶみのの迫力に感動したので、そ
 れを祭りの始めと終わりに取り入れてみました。

 *3,4は、高文研の「群読をつくる」と「楽しい群読脚本集」を参考に組み立
 てました。(20分)
  ここでも、以前家本先生が話されていましたが、大切なことは台本を読むので
 はなく「創っていく」ことだということにふれました。「物語」をくわしく取り
 上げる時間がありませんでしたが、「おむすぎころりん」にしてもどのような村
 で、それぞれどんな仕事をしているのか、時代背景、人物設定など調べ、考えさ
 せ討議しながら創り上げていくことにふれました。ソロだけではなく、コーラス、
 アンサンブルにしても子どもたち一人ひとりが主人公としての意識づけをしてい
 くことが大切だろうと思います。

 *5の実践報告は、バラエティをもたせて、色々な場面での群読の取り上げ方を
 紹介しました。(15分)

 *最後の、まとめの群読では「祭りだわっしょい」を参加者全員その気になって
 お祭りを楽しんでいただけたようでした。

 *2時間の中でどの程度「群読」にふれ理解していただけたかわかりませんが、
 参加の先生方が「久しぶりに声を出して楽しめた」といってくださったのが何よ
 りでした。また、「日ごろ、子どもには声を出しなさいといっているが、いざ、
 自分が声をだすとなると難しいですね」という声もとどきました。これから学校、
 学級で実践されて報告が届くのを楽しみにしています。

 *書籍の販売を担当の先生にしていただきました。休憩時間を十分に取れなかっ
 たので売れ行きはあまりよくなかったと思いますが、関連書籍と群読の会、夏の
 大会の紹介のチラシを作って資料につけて説明しましたので、その後の反応を期
 待しています。


(資料 )
 「子どもの心にとどく、群読を創ってみよう」
 〜群読を通して響きあい高まりあう学級・学校づくりを〜
               2005・11・29 大和市立桜丘小学校にて
                       日本群読教育の会 海上 和子

 ◆ 声の文化「群読」 入門講座レジメ ◆

 1「声の文化」群読について
   @群読とは
   A身近なところにある群読
   B大勢で言葉を唱える意義
    ア 声を合わせると願い事がかなう
    イ 相手に意志を伝える、協力性の芽生え・・・生きる力を育てる
    ウ 創造的な表現能力を高める・・・文化的な体をつくる 
    エ 文化的個性を持った楽しい学級・学年・学校をつくる

 2 みんなで群読 (実 習)
   @ふたり読み・ことば遊び「さよならさんかく」「そうだんごと」「しらないおとこ」
   Aディベートにも    「かたつむり」                   
   B大きな声の出る教材・声のものさし  「らいおん」                 
   C群読脚本の作り方 A 「すっとびとびすけ」             
   D群読脚本の作り方 B 「地引き網」   
   E群読の歴史・江戸時代の群読 唱歌 「江戸ばか囃子」

 3 群読の技法演出
   @技法・・群読で使うことの多い技法や用語
   A隊形・・脚本に応じての隊形
   B動作・・効果・擬声語など

 4 群読のつくり方 

 5 群読を活用した実践
   @入門期の指導 「あいうえお」を使って・・・・・・・・・・・・・・・海上の実践
   A観客をまきこんで 「信濃の一茶」  ・・・・・・・・・・・・・・・・海上の実践
   B音楽発表会で 「たのしい地引き網」・・・四街道市立南小 岩井百合子先生の実践
   C学習発表会で全校群読「ヨーシコーイ!」 一関市立南小学校 澤野郁文先生の実践
 
 5 質問
 
 6 まとめの群読「祭りだわっしょい」

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 ★ 群読冬期研修会の報告                   事務局
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  12月23日(金)に東京飯田橋のセミナールーム「スキャット」にて日本群読
 教育の会冬期研修会を開きました。16名のみなさんのご参加をえて、楽しく充
 実した研修会を実施することができました。
  
  内容は、@会務 A学習T(入門講座)B学習U(中級講座)でした。
  @では、本会の活動方針、役員構成、出版計画、第5回全国大会(東京大会)
 計画について協議しました。「群読の楽しさを広める」「群読の研究を深める」
 という基本的な考えを確認した後、本会の活動をさらに大きく発展させるため
 に活発に意見交換をしました。話し合いの内容は次号で会員のみなさんにお知
 らせします。  

  ABでは、重水と澤野郁文先生が講師役になり、「群読とは何かという理論
 学習」「いろいろな群読の実習」「群読の技法について」「脚本のつくりかた」
 についてワークショップ形式で楽しく学習しました。会の後「基本にかえって、
 群読の意味や技法を学習できて有意義だった」という声をいただきました。

  今後も内容を工夫して研修会を計画していきたいと思います。年末のご多忙
 な時期に、ご参加いただいたみなさんにお礼申し上げます。ありがとうござい
 ました。

 ◆参加者の声


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 ◆ 群読Q&A ◆      回答 日本群読教育の会 副会長 毛利 豊先生
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 Q 三学期の群読は?
   三学期には、@1月に年の初めということで、何かみんなで群読をしたり、
 またA3月には学年の終わりになるのでまとめの会で群読をしたいと思います。
  何 か@Aに適する群読脚本など、資料がありましたら、お教えください。
   また、その群読指導をするときの留意点がありましたら教えていただくと助
 かります。できることは冬休み中にやっておこうと思っています。
  
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 A前回と同じく、小学校の先生からAのような質問を戴きました。これについ
 ては、前号で回答しましたので、今回は@の質問を中心に答えたいと思います。

  年の初めを群読で飾ったという実践は、私は寡聞にして知りません。おそら
 く、まだ「ない」のではないかと思います。そこで、どんなことが出来そうか
 をご一緒に考えてみましょう。

 「正月はおめでたいものです。では、何がめでたいのか。正月だからめでたい。
  いや、そうではありません。命永らえて無事に新年を迎え、今年1年も生き
 られそうだ、そのこと自体が実はめでたく幸運なことなのです。
  少しくらい成績が悪くても、お金が少ししかなくても、異性にもてなくても、
 それは全て去年のこと!生きて在ればこそ、良くなる可能性もある、芽が出る
 望みもある、そう元気を出して今日からまた頑張りましょう」

  こんな前置きなどをして、子どもたちに、ではどんなことを実現する一年に
 したいか、新年の抱負を披露してもらうとどうでしょうか。
  それを「合の手」技法や「囃し言葉」技法(註1)を使って群読脚本にする
 のはいかがでしょうか。

  伝統芸能「豊後万歳」(註2)の一節に次のようなかけ合いがあります。

 太夫 「爺ちゃん宝よ、婆ちゃん宝よ、ボンこそ宝よ」
 囃子方「万歳、万歳」
 太夫 「嬢こそ宝よ」
 囃子方「万歳」
 太夫 「なかでも宝は、…」(と続く)

 これにならって、

 川上「私の抱負は、成績アップ」
 全員「がんばれ、がんばれ」
 川上「コツコツまじめに、点取るぞ!」
 全員「できるぞ、できるぞ」
 山田「僕の抱負は、試合の優勝」
 全員「がんばれ、がんばれ」
 山田「チームと仲間を大事にするぞ!」
 全員「ファイト、ファイト」 


  いや、〈存在自体が価値〉というのであれば、次のような忠実な翻案物でも
 良いかもしれません。

 ソロ「ヨシ君宝よ、リュウ君宝よ、アキさん宝よ」
 全員「万歳、万歳」
 ソロ「班長宝よ」
 全員「万歳」
 ソロ「なかでも宝は、…」

  普段はもめたりケンカすることがあっても、年の初めにお互いの存在を認め
 讃え合うことでよい雰囲気が醸成され、ひょうたんから駒となるかもしれませ
 んよ。

  言葉の終わりをみんなでなぞって斉唱する「誦導」形式(註3)も可能です。
  これなら脚本など何も見なくても、相手に合わせて即興でできそうですね。

 川上「私の抱負は、成績アップ」
 全員「成績アップ」
 川上「コツコツまじめに、点取るぞ!」
 全員「点取るぞ!」 


  やはり、7・5などの音節数の言葉でつくるように事前に条件を示しておく
 と、リズム感のある、声に出して心地よい脚本に仕上がります。

  グループごとに作って発表し合ったり、学級全員で唱和したりして、みんな
 で励まし合うと良い雰囲気の正月になると思います。そのためには、年末まで
  に各人の抱負を提出してもらって、担任が冬休み中に全員分を織り込んだ脚本
 を作るという方法もあるでしょう。担任への年賀状に抱負を書くことを薦めて
 もよいかもしれません。いずれにしても、3学期の始業式はみんなで声を出し
 合い、お互いの願いを知り、実現を励まし合う前向きなスタートをきることが
 できるでしょう。
 
  年の初めではありませんが部活応援の中学校の例もありますので参考にして
 下さい。(註4)

  いかがでしょうか。もしこれをヒントにしてご実践をされましたら、ぜひ本
 会に脚本とその様子(出来れば録音も)お寄せ下さい。会報で紹介し、さらに
 皆で考え合って磨いていきたいものだと思います。
  今から、共に作ってゆきましょう。 
 
 (註1)家本芳郎著『群読をつくる』(高文研)119頁〜125頁
 (註2)  同  上            123頁〜124頁
 (註3)  同  上             82頁〜 86頁
 (註4)  同  上            124頁〜125頁


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 ◆ 書籍・CD紹介 「合唱・群読・集団遊び」家本芳郎著・高文研
                 
                 日本群読教育の会常任委員 深沢英雄先生
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  初版は1979年である。今から26年前の本である。私はこの本で群読に
 出会った。小学校の教師になった時である。

 「授業のなかで 1、朗読への出発 音読ができない子ども 国語教師として
 かなり前からぼんやりと気づいていたことである。それは、教材を音読させた
 生徒は、その文章の読みとりの発問に、ほとんどが挙手しようとし、しかも、
 その答えは正確であったということである」という文から始まる本である。

 「なぜこんな小さな声でしか本を読めないのか。なぜつまりつまりしか読めな
 いのか、声を出すことに自信なげな子がいるのか。」と日々悩みながら実践を
 していた頃である。この本のサブタイトル、実践的「文化活動」論という言葉
 にもひかれていた。子どもたちが生き生きと活動できるクラスになればいいな
 とも思っていた。

  読み進めると自分のクラスでもやってみたい気にさせられた。数え唄の群読
 あそびからやってみた。3年の子たちは大喜び。「先生。もっとやろう」とく
 いついてきた。
  この本は集団における表現活動、学校の文化活動のバイブル的な書である。
  学校での群読指導のひろがりはこの書から始まったと言っていい。
  ぜひ、読んでもらいたい本である。

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 ◆事務局より◆
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 下記の件、事務局まで、ぜひお知らせください
  
 ◆群読・朗読にかんするお尋ねや指導上の悩みや質問点がありましたら、群読
  Q&Aのコーナーで取り上げます。お知らせください。
  
 ◆群読の実践や自作の群読脚本をお送りください。会報でご紹介し、実践研究
  を交流したいと思います。

 ◆群読でこんなことをやってみたという実践をお知らせください。概要の紹介
  でもけっこうです。短くてもかまいません。取り組む子どもたちの様子や、
  発表者や参観者の方々の反応など、お知らせください。

 ◆「会員からのお便り」のコーナーを、会員みなさんの声でいっぱいにしたい
  と思います。「会報届いたよ」の声とともに、みなさんの近況や会報の感想
  などお寄せください。なお、会報掲載時に匿名希望の方はその旨(ペンネー
  ムでも結構です)もお知らせください。
 
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