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 日本群読教育の会 会報 33号     2003. 4.8
  日本群読教育の会HP http://www.try-net.or.jp/~seico/gundokutop.htm
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 ●目次●
   会員よりのうれしいお便り
   大会記念号の実践記録
        学習発表会 虹を見上げて 及川 宣史
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 ◆会員よりのうれしいお便り◆
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宮崎の坂尾です。
 群読の会報のペースがあがっていますね。
 いよいよ群読実践集が完成に近づいているのですね。
 ところで、毎年学級通信のタイトルは、詩の題名からとるようにしています。
今年は、次の詩から、「明日に向かって」という学級通信名にしました。

(教師):あしたに向かって
(教師):宮田 滋子



 学級開きの日には、この詩を紹介した後、上のようにみんなで読んでみまし
た。群読というほどのものではないかもしれませんが、「今日から頑張ろう」
という気持ちを持たせるためにはよかったのではないかと思っています。

   今日は、新学年2日目ですが、早速朝の会で、「小川のマーチ」の群読に挑
戦してみました。1回目でおそるおそる読むといった感じでしたが、ちょっと
興味を持ってくれていたようだったので、明日からがとても楽しみです。

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  ◆大会記念号の原稿◆
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 ◆学習発表会での群読表現「虹を見上げて」及川宣史◆           
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 <解説>
 群読表現って楽しいよ

 私には、「中学年で群読に取り組んでみたい」という強い思いがあった。低学年では仲
間と呼吸を合わせたりタイミングをとったりするのが難しいし、高学年では“照れ”があ
ってなかなか自分を出せない、中学年こそ群読に向いていると考えていたからである。
 群読とはいっても、私が考えているのは(本来の群読からいうと多分に邪道とは思うが)
身体表現を思いっきり取り入れたスタイルだ。だから群読ではなく群読表現という言い方
をしている。
できるだけ子どもたちの思いや願いを入れたものしたかったので学習発表会実行委員会
『レインボーJr』を作って、取り組みを開始した。
 まず初めにやったことはJrのメンバーとの群読遊びである。札幌で開催された家本群読
講座の資料などから、いくつかの群読に取り組んだ。自分たちが体験してみて「群読はお
もしろい」「楽しい」「タイミングが合うと気持ちがいい」「みんなで読むと迫力がある」
と感じることができれば、心から仲間を誘う力が生まれると考えたからである。
その後、「せみ」と称して、「じ」で始まる言葉を探し、一人がくりかえして蝉らしく表
現する。それをみんなが真似をして復唱してみる遊びをした。顔をしかめたり手をばたば
た振ったり、強弱をつけたりしながら「自由・自由・自由………」「時間・時間・時間…
……」と鳴いてみた。「辞典」「自慢」「自分」「ジュース」「ジダン」(フランスのサ
ッカー選手)など実にたくさんの蝉が登場して、その度に笑い声と拍手が起きた。
 学年集会でJrのメンバーと実演を交えて「学習発表会で群読表現をやってみませんか?」
と問いかけた。全員が蝉やかまきりになって声や動きを楽しむ時間もとったので「群読っ
ていいね」「やってみたい」という声が大きくなって学習発表会で群読表現にチャレンジ
することになった。

 練習しながらシナリオをつくる

 劇をするときにも今回の群読表現でも、私は最初からきちっとした台本は作らない。初
めは「あらすじシナリオ」と称した素材(今回は詩の原文)や場面設定だけを載せたも
のを配り、自分たちで動き・練習する過程で生まれてくる光った「せりふ」や「動き」を
集めるようにする。
 そうすることで台本通りに「演じる」のではなく、自分の思いをどんどん出して「創り
出す」という意識が高まる。教師のイメージに合うように演じさせるのではなく子どもた
ちの工夫でイメージが広がっていくので、指導にストレスがなく毎回新鮮な発見がある練
習になっていく。自分が考えれば自分の動きや言葉が増えるから、子どもみんなが主役の
意識で取り組むことができるのがいい。
 原作をかなり変えてしまうので作者には失礼かなとは思いつつ、やはり子どもたちの工
夫を大事にしたシナリオを作るようにしている。今回の群読表現では、詩と詩の間にふだ
ん自分たちが思っている「生の声を入れたい」という子どもの要求で、“親に聞いてもら
いたい”という遊び心の部分も作ってみた。子どもたちはこのせりふ作りでも、とても盛
り上がっていた。

 <シナリオ>
 雑誌(あゆみ出版 別冊子どもと教育 96年4月発行)で見かけた佐々布和子さんの
シナリオ(「四季」「子どもの四季」)をベースに、自分たちの気持ちに合った「なまけ
忍者」や「やだくん」を加えて、Jrのメンバーと次のようなシナリオを作った。

  学習発表会 4年・群読表現シナリオ「虹を見上げて」札幌市立北園小学校 4年

 《前方にスポットライトが当たっている》
プロローグ + 音楽  ♪(器楽) 町のうた

ナレーター1 ぼくたちは4年生   毎日いろんなことが起きる
       ぼくたちの毎日は ぼうけんのようだ

小学生1 何だろう このドア ふしぎだなあ
  小学生2 開けてみようか
小学生3 やめとけよ 気持ち悪いよ
小学生1 でも、中に何があるか 見てみたいよ
        《ドアを開ける》   小学生2何か 見える?
小学生3 うん 雪・雪が見えるよ 冬だよ

 《舞台が暗くなる OHPで雪を映す》

ナレーター2 冬 空から雪が落ちてくる 雪が積もる 白い世界 冬


小学生1 このドアはふしぎだね 冬が見えるんだね
小学生2 もう一度開いたら、どうなると思う?
小学生3 春が見えるかもね
小学生1 開けてみようか?
小学生2 おおーっ 春が見える

ナレーター3 春! 空が明るくなる
       春! 草や木がいっせいに芽を出す
       春! かえるが目をさます

(春の場面は かえるの群読表現を中心に構成した 〜中略〜)

小学生4 春はいいねえ。
小学生5 さあ、ドアを開けてみよう
小学生6 きっと夏だよ さあ開けるよ
 《せみが飛んでくる》                       

せみ1 自分 自分 自分 自分 ……… ……… ……… ………
せみ2             時間 時間 時間 時間 ……… ………
  せみ3                         自由 自由 自由 自由 ……
せみ4                                     辞典 辞典 ……
(一斉に)  自分 自分 自分 自分
        時間 時間 時間 時間
         自由 自由 自由 自由
         辞典 辞典 辞典 辞典
  
ナレーター4 夏 太陽 海 キャンプ 花火
           夏 セミも元気 ぼくらも元気!

小学生4   暑いなあ〜 汗が出てくるよ
小学生5   本当に暑いね〜 あっカマキリだ!
ナレーター  工藤直子の「のはらうた」より

小学生7 きのうの宿題あったしょ おれ できなくてさー
小学生8 おれも わかんないのあってよー
小学生9 おかあさんに聞いたら「先生の話 ちゃんと聞いてるのかい」って言うんだよね
小学生7 聞いているんだけど〜、わからないんだよね。
小学生8 あーー 思いっきり遊びたいなあ
小学生9 でも、勉強もしなくちゃなあ

ナレーター  なまけ忍者                           



小学生7 オレたちって、いそがしいよね。
小学生8 月曜日と水曜日はそろばんでしょ。木曜日はスイミング。
小学生1 私はピアノもあるしさ。つかれちゃうよね。
小学生9 それなのに、親にはおこられてばっかり。
小学生2 「さっさと おふろに入りなさい」「早くねなさい」でしょ。
小学生3 自分たちは遅くまで起きてるのに、大人って勝手だよね。
小学生1 それに「あんたはお姉ちゃんなんだからがまんしなさい」だもんね。
小学生2 「お姉ちゃん お姉ちゃん」ばっかり。あーあ いやになっちゃう。
小学生3 親って子どもの気持ち全然わかってないよね。自分の言いたいことばっかり言って。
小学生7 ………でも、大人もけっこう大変なんじゃないの?
小学生8 子どものこと心配しているからうるさく言うのかも。
小学生9 でも、それにしても「ああしろ こうしろ」って、うるさすぎるよね。
小学生7 だから、素直になれないんだよね。

ナレーター5 いやだ いやだ やだ やだ やーだ
ナレーター4  群読 やだくん            



小学生4 おや、ここにもドアがあるよ
小学生5 今度は 何が見えるかな?
小学生6 きっと秋だよ さあ開けるよ

ナレーター1  9月・10月
ナレーター2  じゃがいもができたよ ヘチマもなったよ
ナレーター3  木の葉が赤くなったよ クリがなったよ
          秋!  収穫の秋! 食欲の秋! おまつりの秋! 

出店のおじさん  へぇーい いらっしゃい おじょうちゃん どう?
  出店のおじさん やきそば おいしいよ 最高だよ
出店のおばさん  いらっしゃいませ ラムネが冷えてますよ おいしいですよ
出店のおじさん お姉ちゃん ばななクレープ おいしいよ
子ども  おじさん、それ、どうやって作るの?
出店のおじさん ほら、こうしてつくるんだよ おいしそうなバナナをむいて
  チョコレートをたっぷりかけるのさ
子ども      本当だ。おいしい。
出店のおばさん  ヨーヨーつりはどう? やっていきなさいよ
子ども      おばさん いくら?
出店のおばさん  1回100円だよ。うまくやれば何個もとれるよ。 
子ども      じゃあ おばさん100円
出店のおばさん  あんた、うまいねえ!すごいじゃん。(あとは アドリブで………………)

 《会場の後からおみこしがねり歩いてくる》

  │  ソ    ロ   │  アンサンブル │   コーラス1 │  コーラス2 │
 │まつりだぞ    │            │           │         │
 │           │ まつりだぞ    │          │          │
 │           │           │まつりだぞ    │まつりだぞ   │
  │みこしがでるぞ │           │          │          │
  │           │ みこしだぞ    │みこしだぞ   │          │
  │           │            │みこしだぞ   │みこしだぞ   │
  │むこうはちまき │           │          │          │
  │           │きりりとしめて  │           │          │
  │          │            │わっしょい わっしょい│       │
  │          │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │せなかに花がさ │          │           │          │
  │          │そろいの ハッピだ │           │          │
  │          │          │わっしょい わっしょい│        │
  │          │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │みこしだ みこしだ │         │           │           │
  │          │子どものまつりだ │          │           │
  │          │           │わっしょい わっしょい│        │
  │           │         │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │さんしょはつぶでも │        │             │        │
  │ぴりっとからいぞ │          │             │        │
  │            │これでもいさみの │            │        │
  │           │4年の氏子だ  │           │           │
  │           │           │わっしょい わっしょい│       │
  │           │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │しっかりかついだ │          │           │           │
  │          │死んでもはなすな │           │          │
  │          │            │そらもめ そらもめ │         │
  │          │            │             │そらもめ そらもめ │
  │まわせ まわせ │           │             │             │
  │          │ぐるっとまわせ  │             │            │
  │          │            │ぐるっと まわせ   │ぐるっと まわせ │
  │泣き虫すっとべ │            │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │          │すっとべ すっとべ │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │いじめもすっとべ │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
 │          │すっとべ すっとべ │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │おみこし かつごう │          │              │              │
  │           │           │まかせろ まかせろ │まかせろ まかせろ │
  │みんなで かつごう │         │              │            │
  │           │            │さんせい さんせい │さんせい さんせい │
  │ともだち よぼうよ │          │             │            │
  │           │           │なるほど なるほど │なるほど なるほど │
  │わっしょいわっしょい│         │             │             │
  │           │わっしょい わっしょい│           │            │
  │           │            │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │けいきをつけろ │           │              │           │
  │          │けいきをつけろ │               │             │
  │しおまいて おくれ │           │            │            │
  │            │しおまいて おくれ │           │            │
  │            │            │            │わっしょい わっしょい│
  │            │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │そらどけ そらどけ│            │           │           │
  │            │            │そらどけ そらどけ│            │
  │            │みこしが とおるぞ │           │            │
  │            │            │            │みこしが とおるぞ │
 │金魚屋もにげろ │            │             │             │
  │           │            │金魚屋もにげろ │              │
  │           │あめ屋もにげろ │              │             │
  │           │            │           │あめ屋もにげろ │
  │わっしょい わっしょい│        │             │            │
  │           │           │わっしょい わっしょい│           │
  │           │わっしょい わっしょい│           │            │
  │           │             │            │わっしょい わっしょい│
  │みこしだ みこしだ │          │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │           │子どものまつりだ │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │           │           │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │           │            │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│
  │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい │
 │わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい│わっしょい わっしょい │
  │まつりだ      │          │             │              │
  │まつりだ      │まつりだ     │             │               │
  │まつりだ      │まつりだ     │まつりだ       │              │
  │まつりだ      │まつりだ    │まつりだ        │まつりだ        │
  │ ○         │ ○         │ ○           │ ○            │
  │おまつりだ    │おまつりだ    │おまつりだ      │おまつりだ       │
(この後、全員が並んで合唱曲を歌った。 〜後略〜)

 <発展>
 学習発表会が終わって、子どもたちは自分を表現することに自信をつけたようにみえる。
特に、「まつりだぞ〜」と会場中に響き渡る声で触れ回った達人や郁美のすっきりした表
情に刺激されて、「ぼくも」「私も」と『祭りだ わっしょい』のリクエストがあった。
その度に入れ替わり立ち替わり出だしの「まつりだぞ〜」やソロの部分に立候補する子が
出てきた。
 友だちと呼吸を合わせ、お腹の底から思いっきり声を出すことで、身体的な爽快感と共に
友達との連帯感を肌で感じているようであった。メンバーを替えて成功するだろうか?今
度のメンバーはどうかな?学級全員が心地よい緊張感をもちながら『祭りだ わっしょい』
に取り組んだ。
 学年集会「2学期を終わる会」では学習発表会での群読表現の成果だろうか、子どもた
ちは100%自分たちで作った4年生コールを発表した。
 声を出す・仲間と呼吸を合わせて表現することは、子どもに変化を呼び起こすものだな
あと、改めて群読の威力を実感した。