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 日本群読教育の会 会報 26 号     2003. 3.19

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 ●目次●
    編集前記
    会員よりのうれしいお便り
    記念号の実践記録  有馬敲作「かもつれっしゃ」 山中伸之先生
    「中村聖子先生の実践に学ぶ」 重水健介先生
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 <編集前記>
 日本群読教育の会HPには「情報交換をしませんか?
 自由に書き込める掲示板です」 という掲示板コーナーがあります。
 会員の方は、一度、掲示板に投稿して自己紹介などしてくれませんか。人のつながりを
大切にしたいと思います。

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 ◆会員よりのうれしいお便り◆
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群読会報25号拝受しました。ありがとうございました。川崎先生の実践と子どもたち
の創造は、素晴らしいです。びっくりしました。

おはようございます。 「群読原稿を早く書き上げなきゃ。」と思いつつ,早く目が覚めてメ−ルを開けました。
会報25号を読ませていただきました。川崎先生の群読「かさこじぞう」に驚きました。
「素晴らしい!!」という感想をすぐ持ちました。私も小2を担任していましたので,自
分の実践はどうだったのかと,この1年をふり返ったりしていました。

ところで,原稿づくりが遅くなってすみません。早く学年末の仕事を片付けて,お送り
します。会報にも記載していただいたように,春風とともに全国大会の準備が本格的に始
まります。全国の会員のみなさんより,だんだんと宿泊の予約が入ってきています。南か
らの快い風が追い風になり,大分を駆け抜け,全国のみなさんへ届くように,掲示板を通
して伝えていこうと思っています。

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 ◆大会記念号の原稿◆
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 栃木県の山中先生の実践記録です。擬音だけの詩の群読です。貨物列車の走る様子が浮
んできます。最後のまとめの言葉がいいですね。
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 小学校3年生       ◆有馬敲作「かもつれっしゃ」   山中伸之◆
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<解説>
 『音読詩集 かけっこ 3年』(文溪堂)を用いて、折に触れて国語の授業で詩の音読
を行ってきた。今回、1年間の音読のまとめという意味も込めて、有馬敲の「かもつれっ
しゃ」を群読に脚色してみた。
 「かもつれっしゃ」は擬音語だけで表現されている詩である。貨物列車が連結され、動
きだし、速度を上げ、最高速度に達し、徐々に遠ざかっていく、という様子が見事に表現
されている。
 シナリオを印刷して配布したところ、子どもたちはすぐに声に出して読み始め、音しか
表現されていない世界に大いに興味を示していた。これなら群読にあまり慣れていない子
どもたちでも楽しめるのではないかと思った。

<読み手>
 ABCDEFGの7グループ。
 これは、連結する音が6度出てくるので、貨物列車を7両編成と考え、各グループをそ
れぞれ1両に見立てたためである。
 各グループの人数を4名としたが、学級の人数28名を単純に割り振った結果である。
 ABCDEFGの各グループから1名だけがソロを分担する。Aグループのソロがa、以下、bcdefgとなる。

<演出ノート>
 次のように、いくつかのポイントを押さえて群読を行ってみた。
 なお、7つのグループはそれぞれ縦1列に並んでいる。
 @冒頭の「がちゃん」は車両が連結する音なので、少し動きをつけて行う。最初Aグル
  ープだけが他と離れて並んでいる。そこにBグループが歩いて近づき、Aグループと
  Bグループが一緒になったところで「がちゃん」と言う。以下同様に、各グループが
  近づいて行って「がちゃん」と言う。
 A次の「がちゃああん」は列車が動き出す時の音である。先頭の車両から時間差で後ろ
  の車両まで音が伝わっていく感じを出す。7名の子が「がちゃああん」と言うのだが、
  aの子が「がちゃ」まで言った頃合いをみて、bの子が「がちゃああん」と始まる。
  以下、同様にgの子までが、自分の前の子が「がちゃ」まで言った頃合いを見て「が
  ちゃああん」と言う。おいかけである。最初、合わせるのが難しいが、教師が前で指
  揮をしながら何度か練習すると上手に合うようになる。
 B列車が動き出す「がったん ごっとん」は単純な掛け合いだが、徐々に速くなるよう
  に練習する。
 C列車のスピードがあがる「ごっと がった」はリズムが少し変わるので、何度も切り
  替えの練習をして慣れるようにする。ここでも徐々に速くする。
 D列車が最高スピードに乗った「がた ごと」はなるべく速く力強く表現する。
 E列車が遠ざかっている「かた こと」は徐々に読み手の数を減らし、フェードアウト
  するような感じで読んでいく。

<脚本>
  かもつれっしゃ      有馬 敲

<発展>
指導者である私に群読指導の経験がほとんどないので、子どもたちの力を十分に引き出
すことができていないと思う。それでも、子どもたちの感想を読むと、意外に群読を楽し
み、そして満足しているようだ。
○さいしょは、何が何だかわからなかったけど、今になっておもしろくて、練習するのが
 楽しくて、練習が毎日楽しくて、人前でもできるようになりました。
○発表した時は、みんなと合わさっていてとてもおもしろかったです。練習の時はあまり
 うまく行きませんでした。
○ぼくは練習してる時、本当にかもつれっしゃに乗ってるかと思いました。
○練習の時は、最初はむずかしかったけど、練習するたびに楽しくなってきました。本番
 ではバラバラのところやわすれちゃったところもあったけど、うまくいってよかった。
○練習のとき、最初はかんたんそうだと思ったけど、意外にむずかしかった。発表のとき
 は、最初はきんちょうしていて何もできないと思ったけど、じょうずにできた。
○かもつれっしゃの練習のときは「がちゃん」を何回言うか分からなくてくろうしました。
 でも、四年生に聞いてもらうことができたのでよかったと思います。とっても楽しかっ
 たです。
○かもつれっしゃを練習しました。はじめは「おむすびころりん」のようなものかと思い
 ました。でも意外とむずかしいようなかんたんなようなという感じでした。でも本番の
 時はあまりきんちょうしませんでした。自分ではよくできたと思いました。
○ぼくはさいしょ練習をしている時は、あまり言い方とかはおぼえていなくて、へただと
 思いました。だけれど、どんどん練習しているうちにどんどん上手になってきて、本番
 の時もうまくできて4年生に言う時はさいしょはきんちょうしてしまったけれど、どん
 どんリラックスをしていき、うまくできたと思います。

 練習を繰り返して上手になっていくと、子どもたちから「誰かに聞かせたい」という声
が上がった。そこで、4年生にお願いして聞いてもらったのである。
 満足する表現ができあがれば、誰かに聞いてほしいと思うようになる。逆に考えれば、
誰かに聞いてほしいと思うようになるくらいまで表現の技術を高めていくことが大切なの
だということを、改めて学んだ活動だった。       (『音読詩集 かけっこ 3年』文溪堂)

◆「中村聖子先生の実践に学ぶ」重水 健介◆
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 記念号に掲載の実践記録にはコメントがつきます。「この実践に学ぶ」というコメント
でするこのコメントは編集委員が担当します。編集委員は役員から公募しましたが、
下記 の4氏が手を上げてくれました。重水健介・毛利豊・澤野郁文・片桐史裕先生です。
 「この実践に学ぶ」はどんな内容のものか、中村聖子先生の実践報告について、重水先
生に見本に書いてもらいました。これは そのまま掲載される原稿となります。

 「中村聖子先生の実践に学ぶ」                <重水 健介>
 毎年8月9日に行われる平和記念集会を群読を活用して大きく発展させた実践である。
中村先生は、前年までの方法にとらわれることなく柔軟な発想で、子どもの意欲を引き出
しながら取り組んでいる。  この実践から学ぶ点は多い。
 第一は、実行委員会を「人数制限なし」とし、やる気優先の希望制で、80名という大
人数を集めたことである。行事に限らず、活動を成功させるカギは、それを推進する多数
の勢力をつくることである。
 第二は、実行委員全員で平和宣言を発表するために群読を取り入れたことである。各自
が役割を持ち、さらに、全員の思いを強烈にアピールできる。群読はまさに最適の活動で
ある。この平和宣言の発表に「大勢で言葉を唱えると願いがかなう」という群読の原点を
見る思いがする。
 第三は、平和宣言文の作り方である。各学級から提出された平和をイメージする文章を
もとに、実行委員が平和宣言文をつくるという手順が参考になる。
 第四は、脚本内容にそった発表分担の工夫である。長い重要文をソロが受け持っている
が、主題に関係した主張や説明は、はっきり伝えるためにソロが分担するというセオリー
を学ぶことができる。
 第五は、脚本内容のよさである。子どもたちが、日常の平和学習をふりかえり、戦争か
ら環境破壊まで自分たちの問題意識を訴えるものになっている。この平和宣言を全校生徒
は身近に、そして共感をもって聞いたであろう。平和宣言はこのようにありたいと思う。
 第六は、群読の活動がそのまま平和教育になっている点である。「大勢で読む方が迫力
もあるし思いも伝わる」という子どもの感想がそれを示している。
 こうした取り組みが各地の学校に広がっていけば、子どもたちの平和認識がさらに深く
確かなものに育っていくにちがいない。
 群読を取り入れた平和集会の典型として広く推奨したい実践である。