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 日本群読教育の会 会報 25 号     2003. 3.17

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 ●目次●
    編集前記
    会員よりの知らせ
    記念号の実践記録「子どもが作った群読シナリオ「かさこじぞう」
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 <編集前記>
 この春休み、由布院大会の実行委員会が開かれます。いよいよ始動します。今年の大会
をぜひ成功させたいと思います。
 また、大会記念号の原稿も少しずつ集まってきています。3月末にはすべてそろうでし
ょう。発行元の高文研の山本さんも期待しておられます。
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 ◆会員よりのうれしいお便り◆
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 家本さん、こんにちは。群読の会報24号ありがとうございました。片桐史裕さんの実
践記録が掲載されていて、大変うれしく思いました。

 通信制高校の地域学習会でなんとか「群読」をやってみようと思っていたのですが、テ
キストを読んでCDを聴いて、さあやってみようかというところで「はずかしい」「聴く
のはいいけど、やるのは嫌」と拒否されてしまいました。
 やはり、授業や教育課程内の活動でとりくんだ方がいいのかなと思いました。
 群読をやる「場」をさぐるこのごろです。 それでは、また

今日はありがとうございました。群読講習会、本当に楽しかったです。
講習会では、群読をとおして、音声言語能力を育てる方法を教えていただけました。音読
することを「表現読みしよう」と言ってきましたが、その方法をきちんと指導していませ
んでした。今日はまさに「目からうろこ」でした。
 私自身が表現方法を十分に研究していなかったので、指導することができなかったので
す。その上、中途半端に教えるより、子どもの発想や思いを大切にした方がいいと逃げて
しまい、あまり技術的な指導をしてきませんでした。
 実際、子供たちは色々工夫したりして楽しんで表現していましたので、それに甘んじて
いました。今まで、一人読みの指導と一斉読みの指導とをちゃんとしてこなかったため、
一人読み=勝手読み、一斉読み=口パク読み、になってしまっていたと今日は反省しなが
ら帰ってきました。
 今日教えていただいたことを早速子供たちに伝えていきたいと思います。また、家本先
生のあったかい言葉かけ、子どももやる気が出るだろうなと思いながらお聞きしていまし
た。みんなで一つのものを作り上げる中で、一人ひとりのもっている力を大切にしてくだ
さっていることを自ら体験しながら感じました。

 講習会後の会でも、先生の気さくな(こんなこと言って失礼でしょうか)お人柄にふれ、
うれしくなってしまいました。私たちのもちもちの会は、「互いに教育を語り合おうよ」
という仲間をなかなか集められないため、まだ小さな勉強会なのです。それなのに、
家本 先生が講演にいらしてくださると知って本当に感激しました。そして今日、たくさんのこ
とを教えてもらって、発見して、反省して、無声音で子どもたちに「ごめんね」を言いな
がらもやる気がわいてきて・・・楽しかったです。ありがとうございました。
 月曜日から、私のクラスの子供たちは幸せです。なぜって、私が少し成長したからです。
これからももっともっと頑張っていきます。
 追伸:うれしい興奮のまま、感謝とうれしい気持ちをお伝えしたく、とりとめもなく書
いてしまいました。お許しください。

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 ◆大会記念号の原稿◆
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 宮崎の川崎瑞枝先生の原稿です。小学校2年生の子どもたちのつくった群読「かさこじ
ぞう」です。びっくりする作品です。

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第1章 a 小学校低
            ◆子どもが作った群読シナリオ「かさこじぞう」  川崎 瑞枝◆
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<解説>
 これは、小学校2年生の子どもたちが国語で学習した「かさこじぞう」(東京書籍二下
いわさききょうこ)の群読シナリオを作り上げるまでの記録である。
 きっかけは、群読「おむすびころりん」で、初めて読んだ後、「かさこじぞう」の話に
なった。「かさこじぞうなら、『じょいやさ じょいやざ じょいやささ』だね」とある
子どもが言った。すると別の子どもが、「ぼくもこんなの作れる」と言ったかと思うと、
「じいさま ばあさま 金もない、金もない」と、即興シナリオを元気な声で作り始めた。
 わたしは必死に板書した。2,3度つまると、他の子どもたちが助けていた。拍子が合
わない時は、言葉を伸ばしたり、繰り返したりしていたのが印象的だった。
 こうして、たった15分で第一稿の「かさこじぞう」のシナリオができあがった。その
まま印刷して、推敲させた。実際に声に出させ、「変えたいところはないか」聞いて直し
ていった。1日の推敲に20分から45分。そのたびに、シナリオを作り直して配ったの
で意見も出やすかった。
 1日目は、リズムを中心に話し合った。拍子をとると言いにくいところが分かる。
 2日目は、分担を考えた。「ソロ」と「アンサンブル」と「コーラス」の3つに分けて
みると、「アンサンブル」の台詞がたったの3つしかないことに気づいた。そこで新しく
作ったり、「ソロ」から移動したりした。
 3日目は、「アンサンブル」の台詞をもう少し増やし、「コーラス」の言葉も付け加え、
実際に分担して読んでみた。最後の確認をすると、「これでいい」と全員が納得した。
 子どもの言葉で作らせたかったので、教師の手は一切入っていない。拍子が合わないと
ころもあるが、子どもらしいシナリオに仕上がったのではないかと思う。

 <分担> ソロ1人(ばあさまの台詞と、じいさまがもちつきの真似をする台詞だけ
           は、別の子どもが読むことになった)
      アンサンブル 9人
      コーラス  14人


 ※  ※1,2,3,4,5、7は、字余りなので読みにくい。子どもたちは思い
    つかなかったが、他の言葉に変えるといいだろう。
    「米もち ひとうす ばつたらこ」
    「あわもち ふたうす ばったらこ」というように。
    ※6は、字足らずなのだが、子どもたちは伸ばして読んでいた。
    「耳を すまして よく聞くと」などと変えて読むとよい。

<1年間を振り返って>
 「聞く」「声を出す」ことに意識して1年間取り組んできた。主なものは、毎週1編の
詩の朗読と国語の教科書の暗唱、「聞いたこと作文」である。物語文では「音」を想像さ
せ、楽器や自然にある物を取り入れ音読劇を、学習発表会では、学年で音楽劇をしている。
かけ算九九は、4拍のリズムで覚えた。
 群読は「山かつぎ」を全員で、「らいおん」「早口ことば」をグループで取り組んだ。
 この学年は1年生の時から、週1回読み聞かせのボランティアをして頂いている。また
1分間スピーチも1年生から続いている。
 未分化な学年なので、何がこのシナリオを引き出す手立てとなったのかは分からないが、
直接的には「山かつぎ」の群読と「かさこじぞう」の全文暗唱と考える。
 最初に作り出した子どもは、詩集「のはらうた」が大好きで、プリントをもらうとすぐ
読み出し、リズムに合わせて体を動かすのだった。
 この群読が生まれた2週間後が2年生最後の参観日だった。そこで発表もでき、子ど
もたちも満足だった。おうちの方もこのシナリオが生まれたことを喜んでくださった。
 来年度の2年生に同じ指導で、同じ結果がでるとは限らないが、自ら作り出さないとし
ても、教師の指導があれば、2年生でもシナリオを作れると分かった。
 また「ももたろうで作りたい」「大きなかぶでも作れる」と言う子どもが出てきた。詩
よりも物語の方が、シナリオが作りやすいのだろうか。また「俳句作り」も一つの手立て
になるかもしれないと思っている。