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 日本群読教育の会 会報 24 号     2003.2.26

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 ●目次●
    編集前記
    会員よりの知らせ
    記念号の実践記録「平和祈念集会」
    記念号の実践記録「身体表現としての群読」
    大会記念号の目次
    実践記録に「この実践に学ぶ」
    原稿募集
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 <編集前記>
 このところ立て続けに群読の講座に参加した。どこも実行委員会の熱心な取り組みで盛
況だった。由布院の大会を成功させようという意気込みが伝わってくる。力強い限りだ。
 2月22日は鹿児島だった。「教職員出版」社長の鳥飼美竿氏が「社業感謝の会」とし
て群読の会を企画し、村末勇介先生が実行委員長になって「ららら」という温泉館にて実
施。事務局長の重水健介先生も参加し、80名の参加者によって爆発的な群読が表現され
た。鹿児島の先生たちの声は強く大きく、創造性も豊かで、次々に新しい表現が生み出し
た。会場もよく整い、温泉にも入れた。その泉質は、肌がすべすべになるという美人の湯。
 すべて「わーっ、すごい」の一言だったが、一番すごいのは、10名の由布院参加を確
定したことだった。

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 ◆会員よりの知らせ◆
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「ちいちゃんのかげおくり」を祖父母参観日で発表してからの懸案事項だった老人福祉
施設訪問が昨日実行できました。
 子どもたちが練習した群読の中から5つを選び,お年寄りの前で精一杯発表しました。
お年寄りが涙を流して喜んでくれている姿を見て,子どもたちもうれしい気持ちでいっぱ
いになったようです。自分たちの群読が自分たち以外の人の心に届いたことを実感できた
のだと思います。 「ちいちゃんのかげおくり」では,お年寄りばかりではなく,施設の職員の方も涙ぐんで
いたそうです。「祭だわっしょい」では,わっしょいの掛け声のところに少し振り付けをしたら,
お年寄りの方も一緒に動いてくださったと子どもたちも大喜びでした。「先生,
楽しかったよ」「また行きたいな」「今度はどこへ行く?」と,子どもたちは,益々意欲的です。
 しかし,このクラスは,三月いっぱいでクラス替えになります。子どもたちの要望で群
読をCDにすることになりました(子どもは無茶なことを言い出すものです)。素人の私
が作るのでたいした物はできないとは思いますが,「群読クラス」のいい記念になるかな
と思っています。

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 ◆ 実践記録「平和祈念集会」◆
                      長崎   中村 聖子先生
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★解説★
     私の学校では,毎年8月9日に平和祈念集会を行っている。昨年までは,各クラスから1
名選出された平和推進委員が作った「平和宣言文」を代表の子どもがその集会の中で全校
生徒の前で読みあげていた。
 今年はいつもと違った工夫をしたいという意見が出て,まず平和推進委員になりたい子
どもを人数制限なしで応募したところ全部で80名の子どもが集まった。こんなにもやる気
のある子どもが多くいたのかと思うと,とてもうれしかった。
 しかし,今までのやり方では80名全員に役割を与えることができそうにない。担当教師
で話し合った結果,いつもは代表1人が読んでいた平和宣言文を全員で群読という形で発
表することに挑戦することになった。
 この平和宣言文は,全校生徒から平和をイメージすることばや文を出してもらい,平和
推進委員がまとめてひとつの群読にしたものである。

★演出ノート★
ソロ(1名×16個所=16名),アンサンブル(8名),コーラス1(28名)コーラス2(28名)
 ソロが前列に並び,その後ろにグループごとに全体が3列になるように並んだ。今回は,
このような人数配分にした。各文章が長いので1人ずつ交代させたが,箇所ごとに同じ子
どもが受け持つようにすることもできる。コーラス1と2の人数を変えてもいいし,いろ
いろアレンジができると思う。

<シナリオ>
ソロ         それは蒸し暑い夏の午前中でした
          1945年8月9日 アンサンブル
           8月9日午前11時2分
ソ ロ        私たちの住むこの長崎の地に
コーラス1    1発の原子爆弾がおとされました
コーラス2    原子爆弾は悪魔の兵器でした
ソロ        原爆で奪われたもの
コーラス1    長崎の町
コーラス2    7万人の命
ソロ        原爆で奪われたもの
アン        人々の夢
+コーラス1  人々の希望
+コーラス2  人々の未来
ソロ        あれから57年
アン         放射能の後遺症で苦しんでいる人々がいます
コーラス1    苦しんでいる人々がいます
アンサンブル  心の傷は癒えることはありません
ソロ        私たちは学びました
コーラス1.2    私たちは学びました
アンサンブル  1年生
ソロ        自分たちの足で,自分たちの目で被爆の爪あとを確かめてまわりました
          原爆の恐ろしさ,被爆の悲しみが伝わってきました
アンサンブル  2年生
ソロ        「加害」というテーマで学習しました。昔の日本はアジア諸国を侵略し
          ました。土地を奪い,命を奪い,強制連行もしました
          戦争は人を鬼に変えます。人の心を無くしてしまいます
アンサンブル  3年生
ソロ        世界を見つめました。各国でいまだに戦争や紛争が起こっていて,多く
          の命が奪われたり,難民となって母国を追われたりしていることを知り
          ました
          私たちひとりひとりが何か行動を起こすことに意味があると思います
          そのために平和について聞き取り調査をしました
アンサンブル  学んだことを生かします
ソロ        世界には私たちの平和を脅かすものがたくさんあります
コーラス1    戦争
コーラス2    差別
コーラス1    核兵器
コーラス2    地雷
コーラス1    飢餓
コーラス2    貧困
コーラス1    環境破壊
ソロ       これから平和な社会を築きあげるために私たちは身近なことから始めます
アンサンブル 小さな争いごとをなくします
コーラス1    人に優しくします
コーラス2   いじめや差別を許しません
ソロ       滑石中学校で学んでいる平和の尊さを胸に刻んで行動します
アン・コー全  胸に刻んで行動します
ソロ       世界中の
アンサンブル 平和を
コーラス12  作り出すために
ソロ       被爆地長崎から戦争の恐ろしさや平和の素晴らしさを訴えつづけることを
全員       ここに宣言します
ソロ       2002年8月9日  滑石中学校生徒一同

<発展>   子どもたちの感想をいくつか紹介したいと思う。
○ ぼくはいちばん最初のソロで,かなり重要な役を任された。練習の時は恥ずかしくて
大きな声が出せなかったけど,何回も何回も練習していくうちに,自信がついて本番では
堂々と発表することができた。みんなで一つのことをやり遂げたという達成感があって,
中学校最後のいい思い出になった。(3年生)
○ 初めて群読というものをやってみたけれど,みんなと声を合わせるのがとても難しく
て,最初はうまくいくかどうかとても不安だった。本番ではちょっと間違えたところもあ
ったけど,挑戦してよかった。(2年生)
○ 自分たちで苦労して作った平和宣言文を,推進委員全員で発表できてよかったと思う。
来年も推進委員になってもっと練習をたくさんして,いい集会にしたいと思う。(1年生)
○ 今年の平和集会はいつもと違って,びっくりした。平和宣言文は1人が読むよりも,
今年みたいに大勢で読んだ方が迫力もあるし,思いが伝わると思った。(3年生)

 今回は準備期間が非常に短く,練習があまりできないまま本番を迎えてしまったが,子
どもたちは充実感を味わうことができたようだ。音楽の先生がボランティアでBGMにあ
う曲を提供してくれ,とてもいい効果があったが,爆撃音や原爆落下時の効果音も入れた
らいいのではないかという意見もあった。
 来年はもっと早くから準備をし,今年の群読を発展させたいと思う。

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 ◆ 実践記録「身体表現としての群読」◆
       片桐史裕(新潟県立高田商業高等学校)
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<解説>
 前任校の、二〇〇一年度三年生選択国語表現の授業で、2学期を通して、2コマ続きの
授業の1コマを群読の時間に充てた。継続して取り組むことによって、「声を出す」ことは、
どんなことかを知ってもらいたかったからだ。
 とかく高校国語の授業は観念的になりがちである。頭の中だけで、著者や話者、登場人
物のことを考える授業になってしまう。「いま、ここ」にある自分の身体(からだ)を使
って言語を表現することも国語の授業の中で求められるべきである。もっと簡単に言うと、
自分の身体を使って表現すること自体が「心地良い」ということを体感してもらいたかっ
たのである。
 だから、群読で扱う題材(詩)も、奥深く意味のあるようなものではなく、言葉遊びの
ようなものを多く選んだ。初期の段階ではお手本を聞かせて、その通りに演じさせました
が、二回目以降はシナリオを作ることも活動に入れた。選択国語表現の講座人数は一〇名
だったので、五人ずつ二つのグループに分かれ、それぞれがシナリオを作った。
 同じ題材を扱っても、グループの個性が出て、別のシナリオになり、互いのグループが
意識しあって、互いのいいところを取り入れようという雰囲気も出ていた。
 ある時間の群読の風景を紹介しよう。

<読み手>
 四人、または五人構成。それぞれがソロ、アンサンブルを分担。

<演出ノート>
 教師は「ノリよく」としか指導しなかった。合わせることがまだ不慣れだったので、手
拍子をうち、テンポの取り方のみを指導した。また、必要だったら本文自体に語を加えて
もいいと指導した。

<シナリオ>
 題「らっぱ」  作者 きじまはじめ



 Aグループはテンポを重視し、テンポをとるために語の繰り返しを使っている。Bグル
ープは、詩を忠実に表現し、四名がバランスよく表現できるようなシナリオを作っている。

<発展>
 数ヶ月続けて群読を扱ったので、各時のふりかえりに生徒の意識の変化が現れていた。

〔初期の頃 (九月)〕
 @ 思ったより楽しくできた。前の授業に出なかったので不安がありましたが、笑いも
あり、みんなで力を合わせることができて良かったです。恥ずかしさがなくなりました。
 A それぞれ読むペースが違い普通に読むとバラバラになるがリズムをつけるとまとま
りができる。
 B 工夫が少なかったかな。もう少しアレンジしても良かった。しかも自分が読むとこ
ろ忘れたし。次回はもっと工夫したいです。
 C 続けて読むところが難しかった。テープの様にはいかない。声の大きさとか調節す
るのも難しかった。

〔後期の頃 (一二月)〕
 D あと一回だけど、最後も自分たちらしく楽しくやりたいと思います。
 E ただよむよりおも、動きをつけると楽しくできるし、詩の内容も分かりやすくなっ
た。読み方も少し変えるだけで印象が変わった。
 F 今日はもーっとアレンジできれば良かった。でもそのアレンジがうまくいかなかっ
たから意味ないと思う。今日はみんなでタイミングを合わせるのが大変だった。恥ずかし
がったのも悪かった。今日は反省が多いです……。

 初期の頃は群読の表現自体に対しての感想が多かったが、後期になると、「楽しさ」に
関する感想が出てきた。身体(からだ)を使い表現している自分自身を振り返っている姿
がここから伺える。
 発表はすべてビデオカメラで記録した。反省として、その映像と音声を各時間の発表後、
または次の時間の活動の前に「自己モニター」として、振り返る時間をとればよかったと
思う。そうすれば、各自が自分のいい点・悪い点をふりかえり、次の表現に生かすことが
できたし、他者のいい点を自分に取り入れることができるからだ。表現と鑑賞を一体化す
る指導をするべきだったと思った
 この講座の群読の様子はwebページで視聴できるので、是非ご覧下さい。
http://koketsu.hp.infoseek.co.jp/gundoku/index.htm

 ◆大会記念号の目次◆   2003.2.26現在
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T 群読活動の実践
 第1〜3章
  小学校低  物語「おむすびころりん」    姫野賢一
  小学校高  参観日に初めて出会う群読      坂尾知宏
  小学校   朗読劇「ちいちゃんのかげおくり」  吉田 靖
  中学校   平和祈念集会             中村聖子
  中学校   生徒会ひきつぎ集会         重水健介
  高校    身体表現としての群読        片桐史裕
    
第4章 教師たちの群読
       1 教師の決意を訴える
  学年びらき     荻原・橋本                         

 第5章 地域での群読
  1 群読の楽しさを地域高齢者の皆さんと一緒に 新田茂子

U 脚本編
 第T章 詩
  1 詩     日本語のおけいこ/ふーむの歌/どっこいしょ/へんなひとかぞえうた/
    にんげんをかえせ/かたつむり/ちいさいおおきい/ねこふんじゃった/
    うそつき/おっぺけぺっぽーぺっぽーぽー/おまえがやらなきゃだれがやる
  2 二人読み     わるくち/きのうのあしたはなんだっけ/はの字/むだばなし/はやく/なぜ?
  3 長編詩  ハーメルンの笛吹き

 第2章 説明文・物語
    さんねん峠/人間=巨人/雪わたり

  V 群読活動のすすめ方

  W 群読教育活動の発展と課題

  X 資料編 本書で使用された作品の原作

  Y 日本群読教育の会殻のお知らせ

  日本群読教育の会の活動/規約

  <執筆中>
 小学校    加藤恭子
          深沢英雄
          長塚松美
          山中伸之
          松本順子
          及川宣史
           澤野郁文
  中学校   毛利 豊
          小川 悟
          山口 聡
 なお、小学校から川崎瑞枝先生が加わるかもしれません。とてもおもしろい情報が寄
せられていますので。

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  ◆実践記録に「この実践に学ぶ」を◆
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 各実践記録に「この実践に学ぶ」という解説をつけます。編集委員が分担して書きます。
23文字×36行で書くことになります。

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 ◆記念号 原稿募集◆
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 まだ余裕がありますので、どうかふるって執筆に参加してください。編集前記