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日本群読教育の会 会報 19号 2002.10.9
●目次●
「群読の本」の原稿募集
群読(朗読劇)「ちいちゃんのかげおくり」実践記録
会員よりのメール
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◆「群読の本」の原稿募集◆
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群読教育の会の大会記念号の刊行準備がはじまりました。
★編集担当★
片桐 史裕・毛利 豊・重水 健介・澤野郁文・松本
衆子さんと家本です。
★ 原稿依頼★
ここに、改めて会員の全員に原稿執筆を依頼します。
この本は群読活動の実践記録です。内容は「どんなときに、どんな群読をしたら、ど
んな効果があったか」ということになります。したがって、実践記録の構成は、
1 どんなときにこの群読を実践したか。どう工夫したか。
2 脚本の紹介。ここは大切な実践資料となります。原文を添えてください。
3 まとめ。こんな効果があったと自己評価し、今後の発展を述べる。
枚数は制限はつけませんが、長編の場合は編集のほうで詰めさせてもらいます。
とも あれ、書きたいことを好きに書いてください。この活動は日が浅く、ベテランも
なにもあ りませんので、気楽にお書きください。
★応募要綱★
下記の目次をみて「第1章の1a『詩』を希望します」というように申し出てください。
申し込み先 家本までお願いします。
なお、この申し込みの様子は下記に掲示しますので、ご覧になりながら申し込んでく
ださい。全会員の参加を期待しています。
http://www07.u-page.so-net.ne.jp/pg7/iemoto/tenpu/gunhon.html
★目次★
第1章 授業における群読
1 a 小学校 低 詩と物語
b 中 詩と物語と説明文
c 高 詩と物語と説明文
2 d 中学校 詩と古典と説明文
3 e 高校 詩と古典と説明文
第2章 学級活動における群読活動
1 a 小学校低
b 中
c 高
2 d 中学校
3 高校
第3章 学校・学年行事のなかの群読
1 小学校
2 中学校
3 高校
第4章 学習発表会・文化祭での群読
1 小学校
2 中学校
3 高校
第5章 教師たちの群読
1 子どもたちに聞かせる「読み聞かせ」
2 教師の決意を訴える
3 保護者たちの群読
第6章 群読教育活動の発展と課題
付録 日本群読教育の会のCM
◆群読(朗読劇)「ちいちゃんのかげおくり」実践記録◆
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吉田 靖(長野県 西春近北小学校)
yoshiday@janis.or.jp
http://www.ina-ngn.ed.jp/~yoshiday/
★「ちいちゃんのかげおくり」★
ちょうど娘が生まれた頃だった。当時同じ学校に音楽が専門の先生がいて、音楽会で「合唱組曲 ちいちゃんのかげおくり」をクラスで発表された。私は、発表を見ている間中、娘の顔が浮かんできて・・・「ひとたまりもなくやられた」。そして、「ちいちゃんのかげおくり」が持つ力を感じ、「いつか自分もちいちゃんのかげおくりを聴衆の前で発表したい。」と考えた。考えたが、自分には、合唱を指導する力量もなく実行することができないまま5年が過ぎ、ほとんど自分の中でも忘れかけていた。
★群読ならやれそう★
学校が変わり、それまで、高学年要員だった私は新卒以来、2度目の一年生を担任することになった。一年生の指導など何が何だかさっぱりわからない。戸惑いながら一年を過ごし、「やっぱり、言葉が一番大事なんじゃないかな。」と感じ始め、2年生から「音読」に特に力を入れた。
子どもたちは、教室でどの教科でも音読をし、家庭学習でも毎日おうちの人に音読を聞いてもらった。私の音読のさせ方は、岸本裕史先生の本を読んで真似をしただけのものだった。自分でもよく粘ったと思うほどしつこくやったし、子どもたちも嫌だとは言わなかった。・・・小さい彼らは、「学校の勉強は、そういうものだ」と思ったのかもしれない。その甲斐あってか、「勉強は苦手だけれど音読だけは上手にできる」という子も何人かいるクラスになった。私は、この力を使って何かできないか?と考えていた。
そんな時、家本先生のメルマガ「教育実践ノート」や先生のホームページをきっかけに群読に本腰を入れてみようかと思った。やってみたら、子どもたちは喜んだ。家本先生のCD付きの本にある「どっちの学校いい学校」は大受けで、子どもたちのレパートリーはだんだん増えていった。そして、3年の2学期、「ちいちゃんのかげおくり」の単元がやってくる。夏休みの間、「群読教育の会」の全国大会に参加した後、群読なら自分にもできるかもしれないという気もちが膨らみ、シナリオを作り始めた。
★シナリオ「ちいちゃんのかげおくり」に挑戦★
これをシナリオにするのか? この話は、読むだけで涙が出そうになる。これ以上、何をすればいいのだろう。自分なんかが何か手を加えたら、それでだめになってしまうのではないだろうか。そんなことを考えながらの原作のシナリオ化は、結局、ほとんど原作のままというシナリオになった。だから、子どもたちには、プリントをしてわたすこともなく「ここは、こんなふうにしてみよう」と話して教科書にメモをさせた。(後になって家本先生から「この脚本作りは朗読劇の手法」であることを教わり、確かに朗読劇という方がしっくりすると感じた)
さて、10月の祖父母参観日での発表を目指して練習が始まった。全員が出演するので一人ひとりが読む量は少ないから抵抗感は全くなく、最初からそこそこ読めたが、「表現す
る」という3年生にはちょっとむずかしい課題に取り組まなければならない。
@ 登場人物になったつもりで ちいちゃんは、クラスで一番小さい女の子に決めていた。クラスの子どもたちも異論はなかった。残りの登場人物は、やりたい人が前に出てきてせりふを「表現」し合ってのオーディションをして決めた。地の文を読むナレーターの子どもたちもそれぞれ持ち場を決めた。
私は、難しいだろうなあ、と思いつつ、「登場人物になったつもりで読んでみよう。お父さん、お母さん役の人は自分のお父さんやお母さんになって下さい。ちいちゃんとお兄ちゃん役の人は兄妹だからね。そして、ナレーションをやる人。あなたたちは、ちいちゃんやお兄ちゃんのお友だちだ。元気がいい友だちとか花が好きな友だちとか自分で「こんな人」っていうのを作って、その人になったつもりでね」ともちかけた。子どもたちは、返事はよかったが分かってはいなかっただろうなあ。
ただ、声の出し方には意識が向いていたらしく、
子ども「先生、お年よりだから耳が遠いかもしれないじゃん。大きな声を出さなきゃきこえないね。」
私「そうだね、遠くまで届く声を出そう。おへその下に力を入れてね」
子ども「でも、つぶやくっていうところは?」
私「え?そうだね。はっきりつぶやいてね」子ども「???」
というような分かるような分からないような微妙な会話をしながら、結局は、声を出させて「そんな感じかな・・・んー、もうちょっと高い声出せる?」という文章にしづらい指導?をした。
ただ、練習をしているところに校長が通りかかったことがあり、「先生が、『りゅうた。うまい、最高だ!』と誉めたところがよかったね」と言われた。私は、無意識に誉めていたようでそのことを覚えていなかったが、いいと思ったときに反射的に「うまい」と認めてやることは大事かもしれない。と、書きながらこれじゃあ、全然参考にならないですね。
A 読むタイミング、スピードを変える 各自が読む量はわずかだが、自分の出番がとびとびに出てくるし、アンサンブルやコーラスも一応決めてあるので、友だちが読んでいる文も黙読していなければ大変なことになる。読みのリレーがスムースに行われなければ、即、みんなからブーイングが浴びせられるし、私から雷も落ちる。一回の練習が終わると、みんな「ふー」と言って腰を下ろした。
「間」を取らせることが大切だった。子どもたちは、慣れてくると次から次へどんどん読んでしまう。場面の変わり目であっても、余韻を残すところでも・・・。私「行が空いているところも読んでください。どこがうちなのか―。の棒線、ダッシュっていうんだけど、これも読むんだよ」
子ども「先生、行が空いているところは何秒ぐらい?」 子どもは、心の中で数を数えないと間を取れない。ただし、BGMが文章にかぶっている子どもたちは音楽を聞いて間を取っていた。
意識的に読むスピードを変えさせた。特に、空襲の場面で、「ちいちゃんたちは、どんな様子で逃げている?」と聞くと「慌てて」「急いで」「怖がって」という言葉がすぐに出てくるので、「じゃあ、そう読んでね。」と、読ませた。しかし、これでは、子どもたちは分からないので、読んでいる最中に「走って!もっと、もっと!」とアクセルを開けさせると、言葉が次々に飛び出して、緊迫感が伝わるようになった。ちょうどこのパートにのんびり屋のゆうすけくんとゆうかさんがいて、しかも、掛け合いになるところを担当していたので唇をすばやく動かすのに苦労していたが、発表では、それがいい味になったようにも思われた。
苦労したといえば、クラスで一番はきはきとハイトーンの明るい声で発表できるかいくんが、空襲の直前の場面を受け持つことになった。この場面から、暗い雰囲気になり直後の空襲を暗示させると思うのだが、彼は、明るく「そうです!広い空は〜」とやってしまって、「何か違うんじゃない?」と私や友だちに指摘され、「そうです」の一言を非常に苦労して表現していた。
空襲を逃れた場面からスピードを遅くした。「暗い橋の下に〜」を担当したさきさんは、そのことをよく理解してくれたので後に続く子どもたちのペースメーカーになれた。また、私は、このシナリオの大事なポイントが、「夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子と命が、空に消えました。」の文にあるような気がして、句読点を移動させてみた。どうしてもここが読みたいと志願したかおるさんは、「夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が空に」ときっぱりと読み、そして、トーンを落として「消えました」と表現しようとしていた。
どの子どもも最初から比べると苦労を重ね練習を積み上げた分だけ表現しようという意識も強く持てるようになり発表会を迎えた。
★祖父母参観日で発表会★
大勢の祖父母、父母の皆さんが集まってくださった。子どもたちは、かなり緊張していた。プログラムは、「どっこいしょ」「どっちの学校いい学校」「小川のマーチ」「地引きあみ」そして、「ちいちゃんのかげおくり」であった。緊張のためか、練習不足か「どっこいしょ」から非常に悪いできだった。本番に弱い我クラスのいつもの癖が出てしまったか、と肩を落としながら「ちいちゃんのかげおくり」のBGMをスタートさせた瞬間、彼らの目つきが変わって思わず見入ってしまい、VTRのスタートボタンを押すのを忘れた。
いい声だと思った。多分、そこにいた人の多くがそう思っただろう。今までで一番いいできかもしれない。読み手が間を取ったときに会場がしんとした。読み手と聞き手が一体になっているような気がして、私も祖父母の皆さんと同じ聞き手の一人になっていた。そして、ちいちゃんの命が消える場面で、何人もの人がハンカチで目元を抑えていた。私も、MDの操作という仕事がなければ5年前の音楽会のように「ひとたまりもなくやられた」かもしれないと思ったらうれしかった。
シナリオ 上記HPで音声を公開中 mp3ファイルです。音質はよくありません。
音楽は久石譲さんの[deer's wind」
効果音は「空襲警報」(http://www.s-t-t.com/wwl/se.htmのフリー素材「サイレン」の周波数を変更して使用しました。
登場人物 ちいちゃん 父 母 兄
おじさん おばさん
ナレーター 大勢で分担
アンサンブル ナレーターが兼ねる
コーラス ナレーターが兼ねる
舞台配置図 ○○○○○○ ○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○
兄 ちい 父 母(3列目に移動することで死を暗示)
↓
観客
音楽 適当なところでF・O
★今後★
発表会は、子どもたちにとっても満足だったようである。多くの子どもが家に帰ってから家族に誉められ、ある子は今までの苦労した練習を振り返り、ある子は、おじいさんと戦争について話をした。
ある母親は、これが平和教育へのきっかけになればとの願いを伝えてくれた。そうなるかもしれない。おじいさんやおばあさんと交流が生まれるかもしれない。
次は、クラスの親が勤めている学校からちょっと離れた老人ホームへ、電車に乗って「公演旅行」に行くことになっている。
◆会員よりのメール◆
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群読ニュ−ス18号を拝受しました。そして,大分大会へ向けての宣伝をありがとうございます。九州各県の先生方にも協力をいただき,大分県だけでなく,九州の群読全国大会という意識で準備をしていきます。
今のところやっと運動会が終わり,いよいよ研究の秋を迎えます。明日からの2年生の群読は,「おむすびころりん」「ちいさい おおきい」と進めていきたいです。「ちいさい おおきい」は,教育出版小2の巻頭詩になっています。ご無沙汰していてすみません。ニュースありがとうございます。通信制は遠いところから生徒たちが通ってくるので地区別に学習会があります。私は長岡学習会なのですが、そこで群読のCDを聴かせやってみようと持ちかけています。女子はいいのですが、男子が恥ずかしがって、逃げています。聴くのは楽しい、おもしろいけど、自分でやるのはちょっと…という高校生が楽しむにはどうしたらいいのかなと悩んでいるこのごろです。